テクノロジー

2017.10.29 10:30

米テック業界の「転職を変える」画期的テクノロジー企業

nd3000 / shutterstock.com

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Aline Lernerはマサチューセッツ工科大学(MIT)で、コンピュータサイエンスとニューロサイエンスを学んだ。卒業後の彼女はあえてテック系の仕事には就かず、全米各地を転々としながらレストランの料理人として働いた。

そこで彼女が学んだのは、レストラン業界の採用プロセスの大胆さだった。「採用面接は無く、レジュメ(履歴書)で応募者を選考することもない。採用する側はとりあえず応募者を店に呼び出して、どれほどの技量を持っているかを調理の現場で確認する」

それから約10年が経った今、Lernerはレストラン業界での経験を活かし、テクノロジー業界に新たな採用の仕組みをもたらそうとしている。経験豊富なエンジニアたちに、彼らにふさわしい別の企業のポジションを与えるのだ。

Lernerが立ち上げたエンジニアの転職支援プラットフォーム「interviewing.io」は先日、300万ドル(約3.4億円)のシード資金をSusa Venturesの主導で獲得した。出資元にはSocial CapitalやUlu Ventures、 TenOneTen Ventures、 Manifest Investment Partnersらも加わった。

interviewing.ioの取引先にはフェイスブックやアマゾン、ウーバーやエアビーアンドビー等の有名企業もある。応募者の選考にあたってはレジュメを用いず、技術的なインタビューをライブチャットで行う。

「応募過程からレジュメを無くしたことで、才能あるエンジニアをより広範囲な業界や地域から集めることが可能になった」とLernerは言う。MITのような名門校の卒業生でなくても、優秀な人材は豊富にいるのだ。

「大学や高校をドロップアウトしてしまった人の中にも優秀な人材はいる。エリートコースから外れてしまった人のほうが、前向きでガッツにあふれているケースも多い」

interviewing.ioは求職者らにまず、匿名で参加できる事前面接を行い、経験豊富なエンジニアが彼らの能力を査定する。上位で面接を通過した求職者にはリフトやQuora、Asanaといった有名企業の面接のチャンスが与えられる。

「性別を隠した面接」も可能

「事前インタビューの結果を膨大なデータから分析したほうが、優秀な人材を効率的に発見できる。多くの求職者が大手企業で即戦力として活躍している」とLernerは言う。

interviewing.ioの今後の狙いは、女性や人種的マイノリティの人々にテック業界の一流企業の職を与えることだ。事前インタビューには応募者の性別を隠すために開発された、独自のボイスチェンジャー機能も導入されている。

Lernerによるとinterviewing.ioの参加者の約4割は、女性や人種的マイノリティ、もしくはワーキングクラスの家系に育った、テクノロジー業界では“非伝統的な”属性の人々だという。

「この数字は従来のテック企業の2倍に相当する。当社の使命は、人種や性別に関係なく、優秀な人々に優れた職場を与えることだ」とLernerは言う。

今回調達した300万ドルの一部は、若いエンジニア志望者に無料の面接トレーニングの場を与える活動に注がれる。地方のコミュニティカレッジの学生にも、有名大学の学生と同じチャンスを与えるのが目的だという。「就職の場におけるギャップを埋めるために、出来ることから始めていきたい」とLernerは話した。

編集=上田裕資

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