子供の人身売買と性奴隷の撲滅へ、マリオット・ホテルなど対策強化

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人身売買は、多くの人たちが考えるよりも広くまん延している問題だ。国連の国際労働機関(ILO)によると、被害者は世界全体でおよそ2100万人に上り、その多くが「現代の奴隷」にされている。

人身売買の被害者らが都市から都市、国から国へと移動させられる際には旅客機、電車、バスといった交通機関が使われることから、旅行・観光産業はこの問題への対応において、他の業界とは異なる位置付けにある。

世界86か国で活動を行う国際非政府組織(NGO)「ECPAT/ストップ子ども買春の会」の米国支部(ECPAT-USA)は9月末に発表した報告書の中で、「売春あっせん業者らによって、子どもたちは戦略的に標的にされ、操られている。業者はホテルが被害者らを保護するシステムの一部であることを知らずに、子どもたちの虐待にホテルの客室を利用している」と指摘した。

報告書によれば、ホスピタリティ業界は近年、疑わしい人物を特定し、対応するための研修をホテルなどの従業員らを対象に実施することで、この問題と戦うための対策に積極的に取り組んでいる。

米国にあるホテルのおよそ半数以上がすでに、性的な目的で子どもを狙った人身売買を防ぐための従業員向けの研修を行っている。ただ、ECPAT-USAは、「対応は依然として不十分」としている。

担当業務ごとに「兆候」を警戒

ホテルの従業員向けの研修プログラムは、警戒すべき点を業務ごとに明確に示している。例えば、女性や少女が人身売買の被害者であり、さらに性的虐待の被害者となる恐れがあるケースとしてフロントデスクの従業員が警戒すべきサインは、「男性が自分の娘ではないと見られる年齢差のある女性・少女と滞在」「それぞれが異なる国のパスポートを提示する」などだ。

また、「女性が実際以上に年齢を上に見せようとしている」場合も、この例に当たる。そのほか、「客室料金を現金で支払う」「身分証明書の提示を拒否する」「荷物がない」といった場合も警戒が必要だ。

客室係の従業員は、「特定の部屋に多数の男性が出入りしている」「ごみ箱に使用済みコンドームが多数残されている」といった場合に、犯罪行為の可能性を疑うべきだという。

報告書によれば、ニューヨーク大学ワグナー公共政策大学院はECPAT-USAの活動について調査した結果、次のような成果が見られたと評価している。

・世界最大規模のホテルチェーン10社のうち6社がECPAT-USAと提携しており、研修が実施可能な状態にある

・ホテルの管理職のうち「研修を受けたことで知識が増えたと」回答した人の93%が、「研修は役に立った」と考えている

・研修を受けたホテルのマネージャーたちの82%が、「州の関連法を理解している」と答えた
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編集=木内涼子

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