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ロイヤル・オペラ・ハウス、座席数2256の馬蹄型劇場

「オペラは金持ちの道楽」と敬遠する人が多いのは、日本だけでなく欧州も同じ。では、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスの客席が、毎晩賑わうのはなぜか。その背景には、世界を見据えた長期目線の戦略があった。


午前10時半。ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)の舞台上では、黒ずくめのスタッフがせわしなく行き交い、着々と作業を進めている。舞台に組まれているのは、円形劇場を思わせる3階建てのセットだ。客席では、あちこちに据えられた8台のテレビカメラが出番を待っている。

人気絶頂のテノール歌手、ヨナス・カウフマンがここでヴェルディ作曲『オテロ』のタイトルロールに初めて挑戦する。本人が「エベレストを登るよう」と表現する究極の難役だ。今夜、その瞬間を世界がリアルタイムで見届けることになる。

ただ、舞台上に組まれたセットは、初日を1週間後に控えた『トゥーランドット』のもの。皇帝を乗せる宙吊りの玉座が、頭上からゆっくり降りてくる。リハーサルを終えたらすべて解体し、『オテロ』のセットを組み、夜7時半の公演を迎えるという。

これに加え、ヴェルディの『椿姫』とモーツァルトの『ポントの王ミトリダーテ』も公演中だ。ROHのアレックス・ビアードCEO(54)に言わせれば、「まるでエクストリームスポーツ」のように劇場内はめまぐるしい。

変化を象徴する存在

ROHが拠点を構える英国ロンドンのコベント・ガーデンで、初めてオペラが上演されたのは1732年のこと。1892年に「ロイヤル・オペラ・ハウス」と名づけられ、いまや世界有数の歌劇場として知られるようになった。

オペラとバレエの公演数は年間約320回にのぼり、入場者数は70万人を超える。ロンドンのコンサートホールでは、空席が目立つクラシック音楽の演奏会も少なくないが、ROHは96%という入場率を誇る。ちなみに、テムズ川の反対側にある演劇の殿堂、ナショナル・シアターの入場率は88%だ。

非営利法人によって運営されているROHの収入は、年間1億3110万ポンド(約192億円)。米メトロポリタン・オペラの3億1075万ドル(約344億円)にはかなわないが、ウィーン国立歌劇場の1億1771万ユーロ(約154億円)を上回る。収入は右肩上がりで、17年連続で黒字を達成している。

ROHの収入の約2割は、アーツ・カウンシル・イングランド(ACE)からの助成が占める。ACEは文化・メディア・スポーツ省所管の外郭団体で、芸術文化の振興を目的とする。ROHはどの組織よりも多くの資金をACEから受け取っている。

その理由は、オペラやバレエが群を抜いてコストのかかる芸術だからでもあるが、ROHがロンドンだけでなく全国で、ひいては全世界で文化的に重要な役割を果たし、次世代の育成にも熱心に取り組んでいるからだという。

「ROHは、常に時代の先を見据えていて、変化を象徴する存在です」とACEの広報担当者は話す。

450年の歴史、450年の未来

ROHは、年間12作品を40カ国以上の約1500カ所におよぶ映画館へライブ中継している。国内だけで430カ所を超え、英国のどこにいても50km圏内にROHの舞台をリアルタイムで観られる場所があるという。カウフマン主演の『オテロ』は、今年の目玉だ(日本では生中継ではなく、9月8日より全国で順次公開予定)。

メトロポリタン・オペラをはじめとした一部の歌劇場のほか、演劇のナショナル・シアターなどもライブ中継を行っており、映画館で舞台を楽しむという行為はますます定着しつつある。それは、テレビ放映やDVDで鑑賞するのと同じ体験ではない。BBCでプロデューサーとして長年活躍し、現在ROHで映像関連の責任者を務めるピーター・ジョーンズはこう話す。

「舞台鑑賞は、本質的には共同体活動。世界中で同じ瞬間を共有しているという感覚は格別です」

文 = フォーブスジャパン編集部 写真 = リチャード・ボル

 

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