ビジネス

2017.10.13

企業と社会問題をつなぐ言葉は「もはやCSRではない」

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──あなたは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の共同寄稿文「『コレクティブ・インパクト』を実現する5つの要素」(16年10月号)で、企業は、コレクティブ・インパクトで社会の進歩に貢献でき、競合他社が気づかない経済機会を発見できると述べられている。

ノルウェーの肥料メーカー、ヤラ・インターナショナルが好例だ。同社はタンザニアでの売上高増を目指していたが、農家に肥料を届けるための道路も電力も灌漑設備も整っておらず、農民らは肥料の使い方を知らないなど、諸問題が立ちはだかっていた。

そこで、ヤラは09年、タンザニア政府や企業、農家の協同組合など約70の組織とともに、同国に30億ドル規模の一大農業地帯を築く計画に着手した。世界銀行なども参加しており、同社のタンザニアでの売上高は大幅に増え、多くの農民が貧困を脱するなど、すでに大成功を収めている。

ヤラは約6000万ドルしか出資していないが、パワフルな経済開発を実現させ、競合他社が見落としていた機会をつかむことができた。コレクティブ・インパクトの要素を使えば、割安なコストで、自社が持っていない能力を活用して収益増を見込める。

この例から明らかなように、CSVの実現には、同じ地域での異なる要素のコラボレーションが必要だ。つまり、「地域クラスターの強化」である。そして、それには、コレクティブ・インパクトのアプローチが欠かせない。


マーク・R・クラマー◎社会的インパクト専門コンサルティングNPO「FSG」共同創業者兼マネージングディレクター。ハーバード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院上級研究員、ハーバード・ビジネス・スクール客員講師。

文=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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