ビジネス

2017.10.16

4世代140年以上続く「非上場ファミリービジネス」成功の秘訣

オーデマ ピゲ取締役会副会長、オリヴィエ・オーデマ氏


──オリヴィエさんはピゲ家に生まれ、ブランドを継がなければいけないという運命を担っているが、それをどう理解されたのか?

祖父とは小さいころから非常に近しい存在で可愛がってもらい、スキーやログハウスづくりも教えてもらいました。祖父はよく時計の部品を家に持ち帰り、作業をしていたのですが、子どもとしては何をしているのか理解できずにいました。

けれど、ある日、完全に組み上がったムーブメントを持って帰ってきて、エスケープ(脱進機)の心臓部を触るように言われたのです。恐る恐る触れ、秒針が動き出したその感動の瞬間をいまでも鮮明に覚えています。工房にもよく連れていってもらいました。祖父の隣に座って興味深く見ていたものです。

学校卒業後は、他社の技術的トラブルを解決するという事業を起こしました。オーデマ ピゲに入ることは考えていなくて、誘われたときは正直、ポジティブなレスポンスはできなかったのです。しかし、祖父の意を汲み入社してみると、自身が起ち上げた事業の経験が非常に役に立ちました。

──なぜ上場するという道を選ばなかったのか?

私たちは確かに一族に属している者ですが、会社を自分たちのものとは考えていないのです。私たちはブランドの監督という立場であって、会社は従業員の方々、また、ジュウ渓谷に住んでいる皆様の共有財産なのです。これまで上場や買収のお話はたくさんありましたが、会社が私たちの持ち物でない以上、持っていないものを売ることはできません。また、共有財産として、スタッフやそのご家族、住民の皆様の意見も聞く必要がありますが、恐らく多くの方が賛成ではないとお答えになるでしょう。それが上場しない理由です。そして、それが結果的にこのオーデマ ピゲというブランドを支えているのです。


オリヴィエ・オーデマ◎オーデマ ピゲ取締役会 副会長。オーデマ ピゲ創立者の一人エドワール=オーギュスト・ピゲの曽孫にあたる。素材物理関係の会社経営の後、アメリカとアフリカへの旅に出る。その後1997年に取締役会のメンバーに。2000年に叔母の後を継ぎ管財人となる。

文 = 谷本有香 写真 = 山本マオ

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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