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2017.10.14

世界最先端の「電子国家」エストニア首都の意外な街並み

エストニアの首都タリン

北欧に位置する人口130万ほどの小国・エストニアへの注目度が近年、高まっている。

EU(欧州連合)に加盟した2011年の日本人渡航者の数は8732人だったが2016年には9万9335人と、5年で10倍以上になった。石畳、細道、赤やオレンジの鮮やかな建物たち。あいまにみえる教会と塔──エストニアの首都タリンは美しい古都の街並みが有名。中心部は世界遺産「タリン歴史地区」として指定されており、歴史的景観が保たれている。

ほとんどのガイドブックが観光客に勧めるエストニアのイメージは、この「旧市街」である。その魅力は絵本やおとぎ話と表現される。ここにフィンランドから日帰り渡航できるアクセスの良さとコンパクトさが手伝って、観光客人気が高まっているのだ。

その一方で、エストニアは「電子国家」としても注目を集め、その先進的な仕組みに倣いたい日本企業・団体による現地視察とショールーム訪問が増えている。

1991年に旧ソ連から独立した同国は、ITによる国民生活の発展を国をあげて推し進めている。スタートアップへの支援も盛んだ。これにより結婚・離婚といった一部の儀式的なものを除き、行政手続きの99%がオンライン完結。国政選挙への参加も、投票所に行く必要はない。


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「絵本の国」とも「IT先進国」とも評されるエストニア。ではその間にある、住民の日常生活はどのような景色だろうか? 実際に、首都タリンを訪れてみた。

たくさんの建設現場

タリンは小さな街で、2、3時間も歩けば一周できる。観光客の多くいる「旧市街」から城壁をこえた、その外側に市民の生活はあった。住宅地、ショッピングモール、ビジネス街、劇場、美術館──。

一方「旧市街」のなかは、ほとんど観光客だった。観光スポット人気の上位を占めるのは教会だが、実は国民の半数以上は宗教を信じていない。


観光客に人気の「アレクサンドル・ネフスキー大聖堂」


生活圏を歩く中で印象深かったのが、建物の低さ。そしてたくさんの工事現場、古い住宅。そこに、いわゆるテクノロジー先進国っぽさはない。

スタートアップやクリエイターの集まるクリエイティブシティは、かつての工業地帯を改装したものだそうで、ワイルドで創造力に満ち溢れていた。


「Telliskiviクリエイティブシティ」
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文=横田 結

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