ブリティッシュ・エアウェイズが、より一層の快適な空の旅を提供するべく4億ポンド(約585億円)の投資を決定した。
いわゆるブレグジット(EU離脱)があらゆるビジネスに影響を及ぼすことは必至だろうが、「英国のEU離脱が弊社のビジネスに長期的な影響を与えるとは思わない」と語る同社CEOのアレックス・クルーズ氏の展望は明るい。
今回の巨額投資は市場のニーズに応えた結果だという。ブリティッシュ・エアウェイズの前身であるAT&T社が世界初の国際定期航路をロンドン、パリ間で実現させた1919年は、空の旅はどこか現実離れしたものであっただろう。航空機に乗っての移動が珍しいことではなくなった現在、搭乗客の航空会社への要求はより高度になった。
そうした需要に、ブリティッシュ・エアウェイズはロンドン・ヒースロー空港のラウンジアクセスの整備、ラウンジのリニューアル、空港でのセルフチェックインシステムや生体認証搭乗ゲートの整備、各キャビンクラスへの新世代Wi-Fiの導入、そしてClub Worldサービスの刷新など、総合的な改革で対応する。
先述の4億ポンドの巨額投資は、この広範な改革の中でも、同社のビジネスクラスにあたるClub Worldのサービスリニューアルに向けたものだ。
「私たちブリティッシュ・エアウェイズは、お客様が求めているサービスを提供するというシンプルかつ重要なミッションを追求しています。あらゆる要望に応えられるよう、常にアンテナを張っています」。
今や空の旅は、単なる移動の手段としてだけでなく、忙しさの合間、休息の機会であることも求められている。「空の旅で重要なのは、快適な睡眠と高品質な食事です」と語るクルーズ氏。同社が経営の中核に位置付けるClub Worldでは、まず睡眠の質を向上させるため、最高級の寝具及びアメニティキットを各路線で順次展開する。
また、新たにレストランスタイルのプレミアムな機内食サービスの提供も開始。睡眠と食の改革によって航空業界内での競争力の向上を図る。加えて、ラウンジのリニューアルも一連の改革の目玉だろう。ニューヨークのJFK空港などアメリカやヨーロッパ各地の空港ラウンジの改装・新設を敢行する。
ヒースロー空港にあるファーストクラス専用のコンコルドルーム。重厚な雰囲気のラウンジの外には開放的な空間が。
成田、羽田空港からヒースロー空港へ直行便を毎日運航する唯一の欧州の航空会社として、日本との関係性も濃い同社は、世界有数の活発なビジネス市場として日本にも注目をしている。
「英国はビジネスにオープンなだけでなく、独自の伝統と文化があり、日本の方の旅行先にも最高の場所です。英国人もおもてなしの精神を持っていますし、欧州へのゲートウェイとしてもお薦めします」。
アレックス・クルーズ◎スペイン出身。アメリカン航空、コンサルティングファームでの勤務の後、独立してクリックエアーを設立。ブエリング社との合併、IAGによるブエリング社の買収を経て、現職に。