タトゥーを入れてくれる店で「体のどの部分に入れたいか」と尋ねられ、「リンパ節の上」と答える人はいないだろう。だが、ドイツとフランスの研究者が質量分析計と蛍光X線分析装置を用いてタトゥーを入れた4人の献体の皮膚とリンパ節を調べたところ、次のような結果が明らかになった。
2人の献体はインクがリンパ節にまで入り込んでおり、皮膚の中にはアルミニウムとクロミウム、銅、鉄、ニッケルが確認された。また、タトゥーを入れた4人全ての献体で、皮膚中にチタニウムが確認されたほか、献体のリンパ節は入れ墨のインクで変色しており、ナノ粒子化されたインク中の有害な顔料の成分が浸透していることが確認された。
リンパ節にこうした変化が起きることが健康にどのような影響を及ぼすのか、その点は明らかになっていない。だが、こうした結果が示すのは、タトゥーのインクがこれまで考えられていた以上に、体内で広く移行しているということだ。
インクの中には何が─?
タトゥーを入れる前に、まずはインクに何が含まれているかを確認したいと考える人もいるだろう。米国化学会が発行する「ケミカル&エンジニアリング・ニュース」の記事によると、タトゥーのインクに含まれる顔料は、織物やプラスチック、カーペイントにも使われている。そして、多環芳香族炭化水素(PAHs)などの発がん性物質も含んでいる。
さらに、米科学誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載された記事にも示されているとおり、インクには水銀や鉛、アンチモン、ベリリウム、コバルト、ヒ素を含むものもある。
米CBSテレビの番組「CBSディス・モーニング(CBS This Morning)」は先ごろ、アレルギーや炎症などの反応や発がん性など、インクが持つ潜在的な危険性について紹介した。
番組によれば、インクを製造する企業やタトゥー・アーティストたちは、ワクチンや医薬品メーカー、医師やその他の医療従事者たちほどの規制を受けていない。つまり、タトゥーのインクの中に実際には何が含まれているのか、明確に把握するのは非常に難しいことだと考えられる。