無残な演説で「同情」を買ったメイ首相の過ち

英国のテリーザ・メイ首相(Photo by Carl Court / shutterstock.com)


メイが笑顔で席に戻って聴衆に手を振っていたら、リーダーとしてその状況をコントロールできている印象を与えられただろう。メイには、こうした行動ができるだけの威厳はあるものの、なぜかそうする意思はなかったようだ。

メイは壇上にとどまることで、中途半端な決意を示してしまった。これによって本来なら拍手を送るべきだった聴衆は、気まずい思いを強いられたことだろう。政治家にしてもエンターテイナーにしても、人前で話す者が決してやってはいけないことは、聴衆を同情させることだ。

演説者は、聴衆の先入観に立ち向かい、予想を裏切り、「なぜ今までこう考えていたのだろう」と申し訳なく思わせることができる。これらは、キケロやリンカーン、ガンジー、マーティン・ルーサー・キングといった雄弁家に共通の特徴だ。

しかし、聴衆から同情されることがあってはならない。なぜか? 聴衆が同情するときは、あなたのことを「弱い存在」だと認識するからだ。あなたを犠牲者として見るため、好意は持たれても尊敬はされない。

せきの発作が1回起きただけで、メイの首相の座が揺らぐことはない。しかし、国民の支持を集めて一国を率いる人物としての今後には確実に影響が出るだろう。実に気の毒なことだ!

編集=遠藤宗生

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