その“シード・クリエイティビティ”の発想のもとで、新たな「i-ROAD」のアイディアが生み出された。それが、充電の利用時間や利用者を記録し、使った分だけユーザーが料金を支払う仕組みを実現する認証型コンセント「Smile Lock Outlet」だ。
つまり、電気=コンセントのシェア。新たに充電のための設備を導入するのではなく、街中にすでにあるコンセントを活用して「i-ROAD」の快適な充電環境を実現するというコンセプトである。コンセントのIoT化により誰がいつ、どれくらい充電したかを随時記録するシステムを実現、アプリでコンセントの空き状況の確認や予約を可能とする次世代デバイスの実証実験を実施した。
車だけではなくPCやスマホの充電向けにも普及が期待される”SmileLockOutlet”のコンセント
ゆくゆくは電気自動車だけでなく、出先で充電が切れて誰しもが困った経験があるであろうスマートフォンやパソコンへの使用も可能とする。外出先でのコンセントシェアを可能とする「Smile Lock」が救世主となる未来—それが、志村氏が描くビッグピクチャーだ。
もはや、自動車会社が手掛ける「i-ROAD」プロジェクトが「車」を超えて、人々の快適な「生活」の実現にまで踏み込む。近年は、グーグルやツイッターが広告祭に積極的に参加するなど、広告業界にイノベーションの色がますます強まるなか、従来の広告代理店が強みを発揮するのに必要なのは“生活者”の視点だと志村氏は熱を込めた。
「従来の広告業界が担ってきた分野を遥かに超えて、シード(種子)の段階からクライアントビジネスに関わり、“生活者目線”から課題を導き出すことこそ求められています。技術的な目線ではなく、ユーザーエクスペリエンスの差で勝敗が決まる時代。時代を先読みして斬新なアイディアを生んでいくことこそが我々の仕事の醍醐味かもしれません」
電通4CRP局の志村和広氏(左)。「Smile Lock Outlet」プロジェクトはイノベーション部門でグランプリを受賞した。
生活者目線で探求!東南アジアのミレニアル世代
さらに、会場でひときわ盛況を見せていたセッションが、博報堂生活総合研究所アセアンによる「『Catch the Millennials!』 〜アセアン・ミレニアルズの世代ギャップを探る〜」だ。
世界的にもトレンドを牽引する存在として注目される“ミレニアル世代”の生活意識や労働意識、デジタル行動などを、タイやインドネシアなど東南アジア6カ国1800名への定量調査と、37世帯への家庭訪問調査を通して分析した。
90年代生まれのインドネシア人起業家の自宅で行われた聞き取り調査の様子
企業などクライアント側でマーケットリサーチをする際は、会議室に対象の購買層を集めて座談会をしたりアンケートを取ったりするスタイルが一般的だが、博報堂生活総研アセアンが採る手法はその従来のやり方とは一線を画す。あくまで「生活者目線」にこだわり、路地裏の一般家庭にまで入り込み、“普通の人の日々の暮らし”をその息遣いが聞こえて来るほどにまで掘り下げていく。
地道に足を使った調査結果で今回浮かび上がった、東南アジアのミレニアル世代の需要を掴むポイントは、SNSなどデジタルメディアの使い方における80年代生まれと90年代生まれのギャップである。「アセアン・ミレニアルズ」と一概に一括りには出来ないほど、その年代層におけるギャップは色濃く、そのギャップを掴むことこそ東南アジアの若年層の需要を把握するカギとなるという。
80年代生まれと90年代生まれの世代間ギャップについて様々な分析結果が発表された。
具体的には、80年代生まれはSNSにおいて自分がどのように見えるか入念に事前チェックを怠らず、より美しく、充実している“自分”を表現することにこだわるのに対し、90年代生まれは他人からの見られ方をさほど気にせず、ありのままの日常を飾らずアップロードする傾向にあるというケーススタディー結果を発表した。