新型の「モデル3」の生産台数は同期、目標の15%程度にとどまった。イーロン・マスクCEOが示した当初の計画が1500台だった一方で、260台に終わったということだ。これは(テスラの言うとおり)、生産に「障害があった」ということなのだろう。そして、同社は「リコール」を避けるため、生産台数の引き上げを急がないという適切な選択をしたという。
「マスク・アンド・カンパニー」(テスラ)の今後がどのようなものになろうと、同社はメーカーだ。それも現金を失い続けている──。どのような企業であれ、生産数を増やせないことは、良いことではない。
さらに、並外れてスローペースの同社の生産状況から考えれば、これまでに「一般市民」(テスラの従業員以外)に納車されたモデル3があったのかどうかも明らかではない。顧客の手元に届いたモデル3が実際にあるのかよく分からない現時点で、リコールの可能性を持ち出すとはばかげた話だ。
本当の問題は「キャッシュバーン」
マスクはモデル3の生産計画に自ら「Sカーブ型(の増産計画)」という考え方を持ち込み、段階的に安定生産に至るという驚くべき新たなプロセスについて説明していた。
ただ、テスラにとって最大の問題は、この苦痛を感じるほどに加速しないモデル3の生産ペースではない。それは、キャッシュバーン(現金燃焼)だ。これは同社にとって、今後も最大の問題であり続ける。
自動車メーカーは景気が拡大している時期に生産台数を急速に引き上げることによって多額の現金を手に入れ、経済情勢が許す限り、その売り上げ水準を維持しようとする。だが、テスラはそうした状況に至っていない。
テスラのキャッシュバーンは今年第2四半期が約14億ドル(約1570億円)。今年上半期では、24億ドルだった。第3四半期は生産・出荷台数が期待を下回ったことから、少なくとも15億ドルになると考えられる。この金額が20億ドルになれば、株式市場はようやくこの点に注目するようになるだろうか?
テスラのモデルSとモデルXを合わせた生産台数は第3四半期、2万5076台だった。前期は2万5708台。生産台数は増えていないのだ。だが、それでも同社株は、急成長する企業のそれと同じように取引されている。
また、テスラの主力商品であるモデルSは市場で、陳腐化の兆しを見せ始めている。モデルSの出荷台数は第3四半期、前年同期比で11%減少した。この高級スポーツカーの早期購入者のニーズが、すでに満たされていることは明らかだ。テスラを取り巻く事実はネガティブでも、株価はポジティブに動く──。テスラについては、これは初めて起きたことではない。
自動運転車の将来とそこでのテスラの役割をどう考えようと、同社が近い将来にプラスのキャッシュフローを生み出すだけの十分な速度で成長を遂げていないことは、明らかだ。