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国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル


今日中国では多くの旅行書が刊行されているが、同書が類書と異なるのは、彼女が自分の足で訪ねた日本の名所旧跡や日常食が写真入りで細かく紹介されている一方、買い物に関する情報がほぼないことだ。

ここでいう「日常食」とは、日本人がふだん食べているカレーやラーメン、とんかつ、天ぷら定食といった料理のことで、一般に中国人の日本ツアーのパンフレットに出てくる和牛やしゃぶしゃぶ、かにすき、懐石料理といった料理は触れられない。基本的に冷めた食事を好まない中国人らしからず、駅弁と鉄道旅行の情報が詳しいのもユニークだ。

史詩さんは北京大学卒で、日本のアニメおたくとしての著作もある。中国の新人類といわれた「80后」世代(1980年代生まれ)には「爆買い」は無縁のようだ。

この本の表紙として選ばれた一両きりのローカル線の車両と高く広がる青空の写真から、彼女の世代の嗜好が読み取れる。どんなに日本のアニメに詳しくても、実際に来てみなければ知ることのできない日本の印象とは、こういう澄み切った青空に違いない。

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(左)『自游日本』の本のそでには「日本にひとりの友人もなく、日本語もひとことも話せず、それでも日本を自由自在に旅するための本」とある。(右)『日本东京亲子游』は関西版もある

個人客として日本を訪れる中国の若い女性たちは一人っ子政策の申し子であり、すでに多くは母親になっている。そんな彼女たちの指南書として最近登場したのが、子連れ旅行ブロガーの王晶盈さんが書いた『日本东京亲子游(日本東京親子旅行)』(人民邮电出版社2017年1月刊)だ。

同書は、親子で楽しめる東京の遊園地や動物園、水族館、レストラン、ホテル、キッズ&ベビー用品店、児童書店といった情報が満載だ。体調が変わりやすい小さな子供を連れて日本を旅行する際の留意点や公共交通機関でのベビーカーの利用方法なども書かれている。

中国のネット上には、海外への個人旅行のための情報があふれている。旅行会社に頼らず、個人で観光することが前提なので、目的地への行き方や割引運賃、中国とは異なる日本の社会事情も書き込まれている。人気ブロガーをゲストにしたオフ会も盛んで、そこでは参加者たちの旅行体験が共有され、SNSで伝播されている。


中国の都市部で生まれた若い世代はほぼ全員一人っ子。それゆえ、「ひとり旅」が彼女たちの共感を呼ぶという。

北京のブックカフェで開かれた「独立女生旅行分享会(女性のひとり旅交流会)」というイベントを訪ねると、大学を休学して北欧をヒッチハイクしながらひとり旅した22歳の女性とカルチャー誌の女性編集者が登壇し、会場には154人の女性が集まっていた。中国ではこうした若い世代が集まる旅のイベントは、テーマにもよるが、参加者は圧倒的に女性が多い。彼女たちの海外に行きたいという欲求は、今日の同世代の日本人よりはるかに強いようだ。

これまでの中国人観光客のイメージを大きく変えなければならないだろう。

文・文中写真=中村正人

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