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2017.10.04 08:00

誰がテレビを殺すのか? 殺されないのか?

Diabluses / Shutterstock.com

第二に、僕ら制作陣はいつの間にか「被害者」になってしまったと思う。「インターネットが」「ゲームが」「スマートフォンが」「ユーチューブが」「ネットフリックスが」など、テレビ番組の視聴者を奪ったであろう新興勢力を加害者にすることが多い。
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いつの間にか、僕らは、被害者的な思考になって議論してしまうことが多い。それが問題だ。「攻撃は最大の防御」という言葉の通り、攻めることが必要だ。今からでも遅くないはずだ。僕らは映像コンテンツで人々を喜ばせたいと思っている。魅力あるコンテンツを考えなければならない。

第三に収益だ。ネットフリックスの2017年の制作費予算は60億ドル、アマゾンは45億。さらにアップルは来年、日本の民放各社の制作費を超える10億ドルを投じると報じられている。また、飲料メーカーのレッドブルのコンテンツ部門の予算は売上の30%になると言われており、売上60億ユーロから計算すると約2500億円と考えられる。次々と圧倒的なスポーツイベントや新記録にチャレンジする映像を作成し、僕らもそれを活用させてもらっている。

子どもたち憧れの職業“ユーチューバー”の中には、すでに民放テレビ局の年収を超えるものまでいると言われている。残念ながらテレビディレクターや放送作家はランク外だ。そう、収益構造の変化に対応しきれてないのだろう。きっと。
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第四に、テレビ業界の人材の流動性が非常に低い。急成長を遂げているネット企業などでは人材の流動性が高い。仕事上毎日ネット企業に行くのだが、他業界からも色んな人がミックスされている。硬直性はファッション業界も同じことが言えるかもしれない。逆にZOZOTOWNには多業界からの流入も多い。筆者は、以前Huluでも働いていたが、実にユニークな経歴の人材が集まっていた。

多業界から人が集まるということは、それだけ思考の選択肢が増えるということだろうと思う。それは、収益構造や所得にも影響するだろう。すでにテレビ業界は、以前のように“儲かる業界”ではないのかもしれない。だから多業界から人が集まらないのかもしれない。それは農業や漁業も同じなのかもしれない。

その他にもいろいろな要因があるだろう。グローバル化や広告収益の問題など。そう、テレビを殺す容疑者は、一人や二人ではないのだ。山のようにある。多業界の成功例から学ぶことはあまりできていない。これはアパレル業界も同じだ。

その一方で、人々が映像コンテンツを見る量は増えている。Cチャンネルやリクシルの映像コンテンツを目にしない日はない。筆者自身もテレビを見る時間よりも、テレビ東京やNHKのオンデマンドやTVer(公式テレビポータル)を見る時間の方が長い。

だから映像コンテンツ制作者の活躍の場は増えているのだ。実際には。

冒頭にも書いたが「誰が殺すのか?」という未来形あって「殺した」という過去形ではない。まだ生きている。アパレルのように、放送局が次々と倒産しているわけでもない。だが、確実に危機が迫っていることは間違いない。放送法が改正される2019年か? 東京オリンピックが終わる2020年か? それとも……。ただ間違いないのは、加害者の一人に僕自身も含まれるであろうということだろう。

テレビは大好きである。以前のようなくだらない番組も作れなくなってきたが、さらに面白くする方法論はあるはずだ。殺される前に、対応できると信じている。「企画」と「ビジネスモデル」である。この両輪を回さなければならない。

文=野呂エイシロウ

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