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2017.10.03

「減税=成長」はまやかし、トランプ税制改革案の根底にある嘘

(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

ドナルド・トランプ米大統領と与党共和党の税制改革案は、雇用創出や経済成長を促さず、伸び悩む中間層以下の賃金を上昇させることはない。先ごろ発表された一連の改革案は、うその上に成り立っている。

共和党はまたしても、企業や超富裕層への減税が全ての人を助けることになると信じ込ませ、米国民を欺こうとしている。それが正しい考えだと証明されたことは、過去に一度もない。政府の財源を奪い、共和党の選挙資金が滞ることなく増え続けることを保証するための(富裕層への)プレゼントであったことしかないのだ。

全体として改革案は、誰の助けも必要としないグローバル企業や専門分野に特化した企業を支援するものだ。企業が税負担を避けるために国外にため込んできた何兆ドルもの資金が国内に戻ることはなく、雇用を創出することもないだろう。

そして、トランプが計画している大幅な法人税率の引き下げについても注意深く見ていく必要がある。米国の現行の法人税率は35%だが、寛大な税額控除制度のため、これをそのまま支払っている企業はほとんどないことを忘れてはならない。実効税率がゼロの企業も多いのだ。

減税=成長のウソ

減税は経済成長や雇用の増加に効果をもたらすのだろうか?少なくとも、経済の専門家らの間では、「ノー」という答えが多い。

米紙ワシントン・ポストの経済記者ヘザー・ロングは、次のように指摘する。

「ロナルド・レーガン大統領が1986年10月に署名、成立した税制改革法も効果はなかった。共和・民主両党が賛成した46%から34%への法人税率の引き下げが実施された後も、賃金は何か月も何年も下落を続けた」

シンクタンク、税政策センター(Tax Policy Center)の共同創設者であり、クリントン政権で財務省高官を務めたレン・バーマンによれば、「法人減税が賃金上昇や経済成長に大きな効果をもたらすことを証明するものは一つもない」。

また、アメリカン・カレッジ・オブ・ファイナンシャル・サービシズのジェイミー・ホプキンス教授は、次のように述べている。

「減税が経済成長のきっかけとなることはあり得るが、だが、歴史的に見ても、それが経済成長を通じて税収の減少分を埋め合わせたことを示す例はない。…結局のところ、減税は税収の減少にすぎない」「予算の問題を解決したければ、政府は減税を歳出削減と同時に行わなければならない」

歴史を否定する共和党

歴史は教訓を与えてくれる。だが、共和党はそこから学ぶことを拒否する。2000年代前半のジョージ・W・ブッシュ大統領による減税も、平均賃金(物価調整後)の上昇や雇用創出の実現にはつながらなかった。

米国の富の80%を支配する20%の国民の税金をさらに「免除」する必然性はどこにあるのか?巨額の寄付金で、共和党が与党であり続けることを可能にしてくれるからだろうか?つまり、彼らに対する減税を行えば、共和党の選挙資金に「トリクルダウン効果」があるからだろうか?

この改革案が可決すれば何が起きるかは、この点以上に明らかだ。トランプと共和党は政府から、3兆ドル(約338兆円)近い歳入を奪い取ることになる。つまり、政府債務がさらに増える。もっと簡単に言えば、すでに政府がその方針を示しているとおり、社会保障制度やメディケアとメディケイド(高齢者向け・低所得者向けの公的医療保険制度)を縮小していくことになる。

編集=木内涼子

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