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2017.10.08 18:30

時計のプロが「自分の時計として欲しいと思う」時計

photographs by Kazuya Aoki illustration by Adam Cruft

photographs by Kazuya Aoki illustration by Adam Cruft

かつて世界一のクロノグラフメーカーと謳われたミネルバ。ここ数年はモンブラン傘下でムーブメント製作を担ってきた。それが今年、“ミネルバ”として前面に。ミネルバの熱烈なファンであるジャーナリスト、並木浩一さんにその魅力を語ってもらった。


「ミネルバは仕事を離れても好きな時計です」そう公言するのは、長年ミネルバに魅せられてきた時計ジャーナリスト、並木浩一さんだ。

ミネルバは、かつて世界一のクロノグラフメーカーであったが、現在はモンブランの一部門となっている。モンブランが所属するリシュモングループ傘下に入ったのが、2006年。その翌年にはモンブランと共同で研究機関を設立し、そこで製作されたムーブメントはモンブランに独占供給されることとなった。

「モンブランは、すごく真面目に時計を作る紳士的な時計ブランドです。当初はミネルバの価値がわかってるのかな? と懐疑的でしたが、モンブランはミネルバを紳士的に扱った。ファンとしては、非常にありがたかった」

気鋭のジャーナリストを納得させたモンブランとミネルバの関係は、良好な状態のまま継続されていくのだが、今年1月にジュネーブで開催された展示会SIHHで、新たなる展開をみせた。新作「1858 タキメーター クロノグラフ」など、ミネルバを前面に押し出したモデルが数点発表されたのだ。

「そこが面白い。モンブランは、ミネルバをモンブラン化しようとはしていないんですね。ここへきて、逆にミネルバあってこそのモンブランみたいな感じに広がってきていて、明らかにミネルバを立たせてきました。この1858 タキメーター クロノグラフのデザインソースは、かつての名機、キャリバー20からとったのだと思われます」

ミネルバとは、一体どんな時計なのか。そして、並木さんはどんなところに惹かれたのだろうか?

「フェイスもそうですし、構造もシンプルで格好いいと思います。その上で、ミネルバの在り方が面白いなと思ったんです。同じ設計のまま50年以上作り続けていたりするなど、商売っ気をまったく感じなかったんですよ。時計ブランドはいろんな神話を作りたがるんです。そして、その多くは創られた神話だったりするわけです。ミネルバのように、まったく同じものをずっと創り続けているというのはあまり例がなく、これこそ正真正銘の伝説なんだろうと思います」

モデル自体も「プロが見て、自分の時計として欲しいと思う典型的な時計」なのだという。

そして、ミネルバには48ピタゴラスなど「資産が、まだまだある」とのこと。さらに強固に結びついたモンブラン=ミネルバの今後の展開が楽しみである。

MONTBLANC/1858 Chronograph Tachymeter Limited Edition 100



ブロンズケースを採用したヴィンテージデザインのワンプッシュクロノグラフ。2006年に名門「ミネルバ」を傘下に収めたモンブランが、その伝統を今に受け継ぐべく製作されたコレクションだ。

搭載されたムーブメントは1930年代に設計されたミネルバ製Cal.17.29をベースにしている。44mmのブロンズケースは、エイジングによってブロンズ独特の変色である緑青が期待できるので、使い込むほどに味のある趣を見せてくれる。

ムーブメント:自社製キャリバーMB16.29 手巻き
パワーリザーブ:50時間
ケース素材:ブロンズ
ケース径:44mm
価格:3,242,000円
問い合わせ:モンブラン コンタクトセンター 0120-39-4810


並木浩一◎1961年、横浜生まれ。桐蔭横浜大学教授(博士)、時計ジャーナリスト。ダイヤモンド社で20年余の編集者経験の後、メディアと文化の研究に進み現職。主な著書に『腕時計一生もの』(光文社新書)、『腕時計のこだわり』(ソフトバンク新書)などがある。

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text by Ryoji Fukutome

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