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2017.10.12

ケネディ前大使が語った「ゴミは中国、漁業は日本よ」の意味とは

浜辺に打ち上げられたクジラたち(Photo by Dan Kitwood/Getty Images)


日本のEEZ圏内は全世界の海洋生物の15%もが生息する豊かな漁場にもかかわらず、水産資源量が高位にあるのはわずか16.7%である。トラフグ、ニシン、ホッケをはじめ、全体の半数がすでに枯渇状況にある。さらに2014年以降この海域を回遊する二ホンウナギと太平洋クロマグロは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定された。

太平洋クロマグロは日本のEEZに産卵場がある上、世界の総漁獲量の3分の2を日本が漁獲していることを鑑みても、初期資源量から97.4%も減少し、絶滅危惧種に追いやられたのは日本の責任が大であることを認めなければならない。

ウナギの状況はさらに深刻だ。日本で消費されているウナギの約99%は養殖に頼っている。養殖では稚魚を捕獲して池入れを行うので、それらの稚魚は当然自然界に次世代を残せず、資源は減少の一途を辿った。その養殖に利用されている稚魚の7割もが、違法漁業によるものとされる。過剰漁獲に加え、IUUの問題が深刻なのだ。IUUとは、Illegal(違法)・Unreported(無報告)・Unregulated(無規制)の漁業問題であり、ウナギやサメが典型的な対象魚だ。

水産政策は速やかなる改革が必要だ。漁獲量の減少に伴い、日本では漁業も衰退産業化している。日本の漁業者の平均年収が約200万円と言われる中、漁村の存続問題も深刻である。水産先進国ノルウェーでは漁民の年収が1000万超とも言われている。ではその違いはどのようにして生じるのだろうか。

欧米の水産先進諸国は持続可能な水産資源の利用のため漁獲可能総量(TAC)をもとに個別漁獲量を管理する「IQ」や個別漁獲量を売買できる「ITQ」方式へと転換した。一方日本はいまだに早い者勝ちで乱獲を招く「オリンピック方式」を採用し続けているのだ。TACの設定魚種も日本は7種。アメリカの528種と比べるまでもなく極端に少ない。TAC設定数を増加させなければ有効なIQ導入は実現しない。

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築地市場のマグロの初競り(Photo by Getty Images)

欧米ではすでに認知されている持続可能な漁業、持続可能なシーフードの消費の重要性。日本は周回遅れながらもクロマグロの資源についてようやく今年になって2034年までに現在の1万7千トンから13万トンまで回復させる国際合意に至った。意欲的な漁業者もあり、NGOによる消費者やステークホルダーへの意識啓蒙も幕を開けた。アカデミアや企業も含めオールジャパンでの取り組みが不可欠だ。

水産資源の問題はなかなか根深く一筋縄ではいかない様相を呈しているが、今後は持続可能性を付加価値とするトレンドセットが必要だ。2020年のオリンピック・パラリンピックの調達方針は国連の基準を満たしておらず見直しが迫られている。豊洲問題は、どこで売るかが決まったら、次は何を売るかだ。政策改善と市民啓蒙は車軸の両輪として相乗効果を生むはずだ。

国連の提唱する持続可能な開発目標・SDGsの14番が「海を守ろう」だ。すべては子供たちに美しい地球を手渡すために。現代を生きる我々の責任は重い。

この連載では、海洋環境保護NGOの立場から、持続可能な社会の実現に向けていま日本がとるべき道を考察していきたい。

文=井植美奈子

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