ビジネス

2017.10.07

「長いものには巻かれない」化粧品ブランド、LUSHの原動力

ラッシュ共同創立者・マネージングディレクター、マーク・コンスタンティン(photograph by Haruko Tomioka)

持続可能な循環型社会を目指し、型破りな製品づくりを続けるラッシュ。政治的キャンペーンをも臆さない企業の原動力は、ぶれない倫理意識だ。

量り売りのソープや入浴剤などで、日本でもおなじみの化粧品メーカー、ラッシュ。ポップでカラフルな製品イメージが強いが、いずれも野菜や果物など自然由来の原材料で手づくりされたもの。店の外まで漂う強いアロマは、鮮度がよく、包装のない裸の状態で売られているものが多いからだ。ボール型の入浴剤、固形タイプのシャンプーやマウスウォッシュなど、型破りでユーモアとストーリー性がある製品は、他メーカーとは一線を画すユニークなものだ。

「私はずっと『普通』に逆らってきた人間ですからね」。ロンドンのオフィスで会った創立者のマーク・コンスタンティンはジョークと笑顔を絶やさない。

1980年代、妻のモーと開発した美容製品をザ・ボディショップに卸すことに成功。そのころから植物由来のものを主原材料に、動物実験は行わない方針を貫いてきた。1994年にラッシュを設立し、現在、世界49カ国に930店、日本では約100店舗を経営する一大グローバル企業に成長させてきた。

「ビジネス目標は、持続可能な原材料で製品を製造販売し、利益を上げ、正当に納税し、収益の一部を社会に還元することです。薄利多売で多大な利益を上げながら、うまく納税を免れる企業が多いですけどね」。環境、人権、動物福祉の改善を掲げる倫理的信念は、製品と合わせてラッシュが支持されてきた理由でもある。

その方針がストレートに表れた製品に、「チャリティポット」というクリームがある。消費税以外、売り上げ全額がチャリティ活動に寄付されるものだ。「私自身、16歳でホームレスになり、チャリティ団体に助けられました。少額でもふさわしい人や目的に投じれば、大きな実を結ぶものです」。

過去10年間、このクリームの売り上げ約27億円は、世界各地の5500を超える草の根的活動や団体に寄付されてきた。


ボディクリーム「チャリティポット」の売り上げは、公平な社会実現を目指す草の根活動等のため全額寄付されている。

震災後の日本にはほかの支援も行われている。「粘土のように遊べるカラフルなクレイソープFUNの売り上げの一部を、福島の原発事故の影響を受けた子どもたちに『楽しみ』を届けるために寄付しています」。FunDと名付けられた支援活動だ。

原材料の仕入れ先開拓も倫理活動の一環と考える。「フェアトレードにとどまらず、生産者も地域の生態系も豊かになるよう、バイヤーチームが世界各地に足を運んで探求しています」。各製品とも原材料の産地などはウェブサイトに明記されている。

加工食品や化粧品用に大量使用されているパームオイルに関しては、パーム栽培が持続不可として、3年がかりで脱パームオイル製品を開発。その代わりに使われる菜種オイルの中には、福島・南相馬産のものもある。「放射線物質を土壌から吸収するのにオイルには残留しないという、菜の花は魔法の植物ですから」。このオイルと豆腐やしめじを合わせてつくられる石けんは「つながるオモイ」という名前で販売されている。
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text by Megumi Yamashita, Ryo Inao、edit by Shigekazu Ohno

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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