セントジョンは前職のアップルで、アップルミュージックのマーケティング部長として注目を浴びた後、セクハラ問題に揺れたウーバーに移籍した。当時、「世界で最も愛される企業の一つから、ウーバーに転職するのはどんな心境か」と尋ねられた彼女は、「今こそ、私の出番だと思う」と答えていた。
セントジョンは白人男性が大半を占めるシリコンバレーの中で、異質な存在であることは間違いない。スピーチの冒頭で彼女は力強く宣言した。
「シリコンバレーに多様性が欠けていることは誰の目からも明らかだ。でも、だからこそ私が力を発揮できる。私の代わりになれる人物は他にはいないのです」
セントジョンは困難な仕事に直面している。ウーバーのブランド責任者に任命された彼女は、スキャンダルまみれの会社のイメージの立て直しの役割を担っている。聴衆たちに彼女は自分の熱意を大事にし、リスクを恐れないことの重要性を説いた。
「今でも人から、なんでウーバーの仕事を受けたの?と聞かれることがある。すると私は、ただやりたいと思ったからと答えている。それがリスクの高い選択肢であるほど、達成した時の喜びも大きいものです」
セントジョンはガーナ人の両親とともに12歳で米国のコロラドスプリングスにやってきた。白人ばかりのコミュニティの中で、自分は異質な存在であると感じていた。しかし、彼女の母親はセントジョンが、そのままの自分で居続けることの大切さを説いた。自分が背負ってきた文化やアイデンティティを大事にして生きろと。
セントジョンがウーバーの企業カルチャーの変革に乗り出すにあたり、大切にしているのもそれと同じ思いだという。彼女は、人はみな本質的な部分では良い心を持っていると信じている。また、人間は互いに何かしらの共通点を見いだせるものだと考えている。お互いの人間性を尊重することが、シリコンバレーを救うのだとセントジョンは述べた。
「テクノロジー業界に人間性の重要性を訴えかけていくこと。それが今の私の仕事です」と彼女は言う。
「人を採用する場合は、自分とは全く違うタイプの人を採用することが大事だ。人はみな、自分と似た人を求めがちだ。けれども、共通点を持っているけれど自分とは全く異質な人と出会うべきなのです」