米国の「ヘルステック」を開花させた3つのカギ

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投資先として注目されたのが、オバマが宣言した「医療の効率化」です。地域医療を、医師、薬剤師、スーパーマーケットなどでIoTを使って「みんなで管理しよう」という動きが起きていたところに、運よくiPhoneが07年に登場したばかりでした。iPhoneがIoTを加速させ、さらにセンサーテクノロジーが発展していきます。

従来型の創薬や医療機器のベンチャーは動物実験や工場設置などでコストも時間もかかるのですが、センサー系のヘルステックは短時間で結果を出せます。センサー技術は小型化と省電力化され、ここに投資が集まると、IoTを使ったヘルスケアビジネスが一気に開花したのです。

日本ではiPhoneが登場すると、ゲームのベンチャーが台頭し、大きな成功を収めました。ゲームで出発した企業が、今、医療にシフトをする傾向にあります。こうした企業はアイデアベースではなく、しっかりした技術を基盤にした開発に注力した方が日本の社会に向いていると思います。

先行しているアメリカのヘルステック企業の特徴は、ニーズをしっかりと捉えている点です。スタンフォード大学の「Biodesign(バイオデザイン)」や「Start X Med」といった医療機器イノベーションのための人材育成プログラムがあり、上場で900億円の価格がついた学生ベンチャーがあります。技術といっても難しいものではなく、IoTです。通院しなくても不整脈を確実に診断できる、センサー技術を用いたものです。保険会社がもっとも喜びそうなデバイスです。

ニーズを的確に見つけるには、開発者がチームを組んで現場に入ること。そしてチームの面々が異なるバックグラウンドをもっていること。そうしたチームが在宅医療、介護、病院に入り、患者が診断されて治療や手術を受けていく流れを経過観察すること。それが大事です。

医者自身が気づかないニーズを見つければ、開発した商品やサービスは一気にブレイクします。医療イノベーションとは、いくつもの偶然を生かし、人に入っていくことで生まれるのです。


池野文昭◎浜松市出身。自治医大卒業後、9年間、地域医療に携わる。2001年からスタンフォード大学。13年にVC「MedVenturePartners」を設立。日米双方で医療機器エコシステムの確立に向けて活動中。

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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