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2017.10.01

私が26歳ですべての医者を「クビ」にした理由

ロビン・ファーマンファーミアン/起業家、エンジェル投資家、講演者。いくつかの初期ステージの医療系スタートアップに関わるほか、非営利組織Organ Preservation Allianceのボードメンバーなどを歴任。


さらに、こういう医療の中枢部だけでなく、もっと身近にAIと接する機会も増えていきます。

Sense.lyの遠隔医療サービスに登場するアバター看護師「Molly」がその代表格ですが、患者とのコミュニケーションのインターフェースになるバーチャル・ナースやロボットにはすべてAIが実装されています。
 
米国では、音声コミュニケーションはすでにトレンドになっています。音声情報データの蓄積とAI技術の進化で音声認識技術も急速に進んでいます。患者は今後ますます自分にカスタマイズされたバーチャル・ナースやロボットと滑らかな会話を交わしながら毎日の疾病管理をしていくことになるでしょう。

ロボット、ドローンの医療への応用
 
ロボット技術も幅広くて、単純に語れません。手術ロボットは目に見えてわかりやすいですし、最近ではいわゆるウェアラブル・ロボットも一般化してきました。

たとえばEksoは脳梗塞の後遺症などで下肢に麻痺のある患者のためのセンサー付きの外衣(exoskeleton)です。歩行トレーニングのリハビリ支援に使われています。このようなロボット技術は米国国防総省の研究機関DARPAが最先端。ここの基礎技術の多くが医療用に転用されて優れた製品になっています。

義手・義足の技術も進んでいます。The DEKAArm Systemは、事故などで腕を切断された人につける義手を開発しています。脳神経科学とロボット技術の融合で実現したアートと言ってもいいレベルの技術。本当に考えた通りに動きます。郵便物を開封して封筒から便箋を出したり、生卵を指先でつまんでケースからケースに移し替えたり、YouTubeで映像を見られますが、見るたびにびっくりします。

やがて3Dプリンターで失った腕を再現・再構築してDEKAの技術と接続できるようになれば、腕の再現が可能になるかもしれません。

体内ロボットの例でいうと、わかりやすいのは飲み込むタイプです。

PillCam COLONはカプセルに入れて飲み込む、大腸の内視鏡検査をするカメラ・ロボット。カプセルはビタミン剤のサイズ。中に入っているカメラ・ロボットが腸内を通過しながら写真を撮ってリアルタイムで外部に送信し、カメラは消化管を通過して体外に排出。もちろん使い捨てで回収の必要はありません。内視鏡検査に比べれば患者は圧倒的に楽ですね。

消化管だけでなく、血管内で働くロボットも開発中です。血栓を掃除したり、傷んだ血管を修理したり。でも、バッテリーの充電方法など、まだ解決しなければならない問題が残されているので実用化にはしばらく時間がかかりそうです。

また、ドローンの医療分野への応用も有望です。実用化間近なのが緊急心停止の人を救うためのAEDを搭載したドローン。災害時や、救急車やヘリコプターのアクセスしにくい場所での救急対応に使えるかを試す実験がすでに始まっています。

関連して、ドローンに搭載するための素人向け除細動器、つまりAEDの使用方法の訓練を受けたことがない人にも使える除細動器を開発しているスタートアップもあります。AEDは訓練を受けていないと使うのが難しいですから、ドローンがどこにでも飛んでいけると考えれば、素人向けの除細動器も確かに必要。ベンチャーは次々とニッチを考えますね。

リハビリや痛みの緩和のためのVR

米国では、鎮痛剤で薬物依存症になるケースがたくさんあります。しかも依存のきっかけは手術や入院。術後の痛み対策に処方される強い鎮痛剤、特にオピオイドが問題になっています。ある意味で医原病ですね。私も体調が悪いと痛みます。

痛みにも技術で対応して、薬物依存のリスクを回避しようという動きがあります。使われているのはVRの技術です。
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文=西村由美子 構成=岩坪文子 写真=Ramin Rahimian

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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