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2017.10.01

私が26歳ですべての医者を「クビ」にした理由

ロビン・ファーマンファーミアン/起業家、エンジェル投資家、講演者。いくつかの初期ステージの医療系スタートアップに関わるほか、非営利組織Organ Preservation Allianceのボードメンバーなどを歴任。


ウェアラブルの第2次開発ブーム

現在の医療は「テクノロジーの集合」の時代に入っています。ワイヤレス、ブロードバンドといったインフラストラクチャー、センサー、カメラ、3Dプリンターといったハードウェア、ビッグデータ、MRxのようなソフトウェア、ゲノミクス、プロテオーム、診断学といったメディカル・サイエンス、それらが相互に関連し、急速に変化しています。

なかでも、患者の生活に関わるところでは、センサーテクノロジー、ウェアラブル端末の進化には目覚ましいものがあります。かつては病院の中だけでしか使えなかった大掛かりなセンサーが、腕時計や携帯電話に入ってしまう時代になりました。

しかもワイヤレスで記録はクラウド上に保存できます。病院に行かなくてもデータが取れてリアルタイムで医師と共有できるとなれば、患者の行動の自由が格段に広がりますよね? 

一般に出回っている商品にはまだ精度が低いものもありますが、現在、米国はウェアラブルの第2次開発ブームで、コンシューマー・グッズではなく、医療機器としての小型センサー・モニターが次々とFDA(食品医薬品局)に承認申請を出していますから、臨床レベルのデータが取れるデバイスが出回るのも時間の問題だと思います。

例えば、iHealthというシリコンバレーのスタートアップは、血糖値や血圧、脈拍、水分量などをモニターして自分だけでなく家族や医師と共有できるクラウドベースのヘルスケアサービス展開しています。個別のデータだけでなく、すべてのデータをまとめて毎日トラッキングできることで、患者は今までよりも多くのことが学べるようになります。患者を病院から遠ざける一役を担ってくれるかもしれません。
 
オンタリオ(カナダ)のMedella Healthをはじめ、世界の多くのスタートアップが涙液中の血糖値を測るコンタクトレンズ・センサーの開発に取り組んでいます。グーグルから独立したVerilyもノバルティスとパートナーシップを組んで同様の製品を開発しています。


コンタクトレンズ型バイオセンサー

個人的には、手首に何かをつけるのが苦手なので、早く実用化されてほしい! と待っているのが、皮下に埋め込むタイプのバイタル・センサーです。

2〜3週間継続して使えるものならありますが、一度入れたら半永久的に入れ替えなしに機能するデバイスが欲しい。忙しくてバッテリーを充電するのを忘れがちなので、充電しなくてよいもの。そうすればモニターしていることすら忘れて毎日快適に過ごせます。自動チャージ技術の開発が進んでいるから、近い将来には実現すると思って待っています。

私自身、iHydorateというアプリで日常的に水分摂取量をモニターしています。大腸を切除したせいで水分の自然な再摂取ができないので、必要な摂取目標値をクリアするよう管理していないと、脱水のために生命に関わりかねません。

クローン病は難病ですが、日頃は生活スタイルを一定に保っているので、水分摂取量以外は特にモニタリングしていません。しかし、新しい薬を服用するなど、別の治療を始めるような場合には、臨床レベルのデータが採取できる高精度センサーでモニターします。EKG(心電)をモニターできるシャツを着るなどでしょうか。それにしても、こういった高性能機器も手軽に買えるようになって嬉しいです。

AIと医療現場

医療現場での最先端は、何と言っても、画像解析・画像診断です。

米国では、MergeHealthcare(IBMが買収)やNature Article、眼の画像解析や皮膚がんの画像診断の技術でよく知られているDeepMind Health(グーグルが買収)などが先行例です。何によらずパターン解析はAIが圧倒的に優れていますから、まだまだポテンシャルがあります。

IBMのワトソンが医学部の教科書や学術論文を徹底的に学んでいることはよく知られていますが、この学習でワトソンは時にドクターが見過ごしがちな希少難病の患者の診断が得意になりました。

画像診断のほか、抗がん剤治療の適否の判断など、個別化医療の進展へのAIの貢献も大きいです。個別化医療のデザインには遺伝子情報なども含めた患者の膨大なデータをAIで解析することが前提になりますから。
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文=西村由美子 構成=岩坪文子 写真=Ramin Rahimian

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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