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2017.10.10

ごっこ遊びでなく、日本大企業がシリコンバレーとつながるには?

(左から)NSVマネージング・パートナー 校條浩、世界経済フォーラム リーダー R.ジェシー・マクウォータース、NSVマネージング・パートナー リチャード・メルモン、MS&ADインシュアランス 佐藤貴史、三菱UFJフィナンシャル・グループ 藤井達人、NSVパートナー ダン・キマーリング

自前主義を越えてオープンイノベーションを志す日本企業が増えている。しかし一方で、“ごっこ遊び”にとどまっているといった批判も見受けられる。前世紀から、オープンイノベーションのためシリコンバレーとつながろうとする日本企業はあまたいたが、垣根を超えてインサイダーとなり成果を出した例は少ない。

では、どうすればよいのか?

このほど筆者が登壇した2つのフィンテック関連イベント、「FIN/SUM WEEK 2017」(日本経済新聞社・金融庁・Fintech協会主催)と「シリコンバレー最先端VCが語り合うFinTechの本当の流れ」(Net Service Ventures、以下NSV主催)からヒントを得てみたい。

つまらないヤツと思われれば、名刺もくれない

半年前、オープンイノベーションのため初のシリコンバレー駐在を命じられたMS&ADインシュアランス グループ ホールディングス総合企画部の佐藤貴史氏は、赴任当初の苦い経験を共有してくれた。

「AIなど最先端の情報を日本に伝えるのが私の仕事……と自己紹介すると、みんなシラーっとするんです。それから名刺交換しようとすると、『後でね』とか言って名刺がないフリするんですよ」

まずは、シリコンバレーの特徴を理解しなければいけないのだ。佐藤氏曰くその特徴とは、「お寺の鐘みたいなもので、小さくたたくと反応しないが、大きくたたくと鳴りひびく」だ。

「でも、具体的に、保険でサイバーセキュリティのこんなものを探してると言うと、『おー、友達がこんな会社やってるけど行ってみたら?』と紹介してくれる。そして訪ねてみると、それならこいつとこいつが面白いかもしれないと、また紹介してくれる」という。

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(左から)MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 佐藤貴史、三菱UFJフィナンシャル・グループの藤井達人、筆者

シリコンバレーでは、尖った人が好かれ、大看板をしょっていてもつまらないと避けられる。ちょっと勉強しているぐらいでは、何言ってるんだと無視される。スタートアップは時間との闘いであり、視察や表敬訪問は嫌われる。

佐藤氏の駐在中にシリコンバレーのインサイダーを紹介したNSVパートナーの校條(めんじょう)浩氏は、「情報を追いかけると逃げるが、自ら発信すると寄ってくる」と表現する。筆者も日本大企業からシリコンバレーの情報を得たいと相談を受けたことがあるが、待ちの姿勢では成果は得られないと考え直すことをお勧めした。

化けるスタートアップを見抜くには

多くの有力なマイクロVC(小さな資金を提供するベンチャーキャピタル、なおファンド規模100億円超を含む)とつながりを持つNSVパートナーのリチャード・メルモン氏は、膨大な数のアイデアがスタートアップによって試され、そこからいくつかのアウトライヤー(outlier=外れ点)が生まれ、未来をつくっていると指摘する。

しかし、どのスタートアップがアウトライヤーになるかは誰にも分からない。無数の中から、「これは可能性がある」とキラリ光るものを早期から支援するのが、マイクロVCとも呼ばれる新世代のVCたちだ。
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文=本荘修二

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