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2017.09.29

「金とビットコイン」の統合決済システムが良案と考える理由

Julia Tsokur / shutterstock.com

金か、あるいはビットコインか──この問題はこのところ、特に注目を集めているようだ。多くの人が、世界各国の銀行システムが危険にさらされていることに気付いている。そして、それに「代わるもの」は何かについて考えている。

世界中の都市にある集合住宅の空き物件を購入する外国人が急増していることと、各国の銀行が築いたデジタル環境の外で資産を持とうとする人がいることの背景にあるのは、どちらも同じ感情だと見る人もいる。

金とビットコインは、実際には補完的な関係にあると言えるだろう。一方の強みは他方の弱みであり、その逆も事実だ。つまり、金とビットコインは双方が揃うことで、われわれの将来に何らかの役割を果たし得るということだ(ビットコインは、「金貨」のように描かれることも多い)。

金の価値

ローマ帝国が崩壊したころ、裕福なローマ人の家族が自宅の敷地内に埋めた金貨は、今も価値がある。ほぼ間違いなく、今も当時と変わらないくらい価値がある。金を価値の基準として用いることが可能な理由は、こうした安定性にある。価格設定のほか、ローン契約や雇用契約などをはじめとする長期契約を結ぶ際の基準としても、金の価値を目安にすることができる。

そして、金は豊富に存在する。世界には7兆ドル(約791兆円)分に相当する量の金がある。一方、発行されているビットコインの量は、ドル換算すればおよそ330億ドル(3兆7000億円)だ。その上、ビットコインはデジタルに作成された「霧」のようなものだ。インターネットが使えなくなれば、システムはダウンする。だが、そうした場合にも、金そのものは価値を失うことがない。

また、金には所有した人の名前が記されていないが、仮装通貨はたとえ試みたとしても、同様にはなれない。さらに、金は比較的容易に持ち運びや取引ができる。例えば、約4万ドル(約450万円)の価値がある重さ1kgの金地金をポケットに入れて運ぶことも可能だ。

欲しいのは安定性と利便性

ただ、われわれが求めているのは金よりもさらに簡単に取引ができるものだ。ビットコインの用途として多いのは、移民労働者が自国にいる家族に宛てて送金する際など、遠距離での取引だ。また、ビットコインはほぼ無限に分割することができ、小額の取引における利便性が高い。一方の金は、最も小さい取引単位が10分の1オンス(約3.1g)。この大きさの金貨の価値は、現在およそ120ドルだ。
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編集=木内涼子

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