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2017.09.29 12:00

バンダイの職人が本気で開発 「ドラえもん×プラモデル」誕生の裏側


志田が工場フロアのパネルを取り外してくれた。その下には、なんと歴代プラモデルの金型が。



計150枚近くあるフロアパネルの下には、これまで販売した全てのプラモデルの金型が格納されている。最近ではイベントなどで復刻モデルの販売もあるため、30年以上前の金型が時を超えて活躍することもあるという。

「自分の手でドラえもんを造るような感覚」を目指した

ここまで見たように精緻な金型はどのように作られているのか? 続いて、オフィスのデザイン風景を見せてもらった。PC上には見慣れたドラえもんの3Dモデリングが。


見慣れた外見デザイン。


断面図


細かな部品の1つ1つが、プラモデルのパーツになる。パーツ数は約80(HGグレードのガンプラは約100パーツ)。プラモデル初心者でも組み立てやすいが、かといって全く簡単というわけでもない組み応えになっている。

モデリングを担当したのは、これまでガンプラの設計を多数手がけてきた大須賀敏亨。プロジェクトを主導した中原真優とともに、「Figure-rise Mechanics ドラえもん」にかけた思いを聞いた。



普段は目にすることのないドラえもんの内部まで細かく設計された「Figure-rise Mechanics ドラえもん」。デザインの際に一番気を使ったのはどのような点なのか?

「実は、設計で苦労したのは、内部の精密パーツよりも外側なんです。2次元のキャラクターを3次元にした時に、どこからでも可愛く見えるようにするのが予想以上に大変でしたね」そう言って中原が見せてくれたのは、今回の試作モデル。一見完成品と変わらない出来栄えだが……たしかに斜め上から見るとちょっと眼の形に違和感がある。

丸っこいデザインのドラえもんは、漫画やアニメなどの2次元ではシンプルな形をしていても、立体になりきらない。違和感をなくしてどこからでも可愛いドラえもんに見えるようにするために、幾度とない微調整が行われたのだという。



修正を繰り返し、とにかく「リアルさ」を追及した「Figure-rise Mechanics ドラえもん」。誰にも愛されるドラえもんだからこそ、あらゆる世代が手に取れるよう設計されている。

「現在のドラえもんを忠実に再現していますが、一部カラーリングなどは昔のドラえもんも参考にしています。昔のドラえもんに親しんだ20代後半〜30代の方にも楽しんでもらいたかったからです。ランナーでのパーツ配置は、ドラえもんの部位ごとにパーツを分けています。各部位の解説も入れているので、いま組み立てているのがどんな機能なのかを理解しながら、まるで本当にドラえもんを組み立てているような感覚を味わってもらえるよう目指しました」



大須賀がプラモデルを手がける際に求めているのは、とにかく「リアル」であること。だが、その表現方法はたった一つではない。人によって思い浮かべる「リアル」の形はそれぞれ違うからだ。

「プラモデルは原作ありきなので、原作の再現を第一に考えています。とはいえ、2次元を立体にする過程で違和感が出るし、見る人や状況によってイメージが違うこともある。原作に忠実なのはもちろんだけど、その上で手にした人に世界観をイメージしてもらえるのが理想ですね」

「いつも手がけているガンプラではなるべく複雑なギミックの再現を心がけていますが、ドラえもんの造形はとにかくシンプルです。だから今回は、『ドラえもんを自分で組み立てているような感覚』を持ってもらえるよう設計しました」

形状を再現するだけでなく、小さい頃に想像した「ドラえもんが隣にいたら……」「自分が科学者になってドラえもんのような夢のロボットを造りたい!」をカタチにする。それが大須賀が目指す「リアル」の形だ。

「Figure-rise Mechanics ドラえもん」は、2017年11月に全国で一斉販売される予定だ。

編集=野口直希 写真=小堀将生

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