インテルが開発中の「自己学習AIチップ」 エビの脳より複雑

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IBMも「蜂の脳」レベルのチップを試作

Srinivasaによると、インテルは過去3年間にわたり神経形態学的コンピューティングの研究を行ってきたというが、同社はこの分野の先駆者ではない。IBM Researchは、インテルより前から研究を行っており、「TrueNorth」というチップを既に開発している。このチップはLoihiと同じく、スパイクによってニューロン間の情報伝達を行っている。

TrueNorthは4096個のコアと54億のトランジスタを内蔵しているが、70ミリワット程度しか電力を消費しない。TrueNorthは、Loihiの第一世代を上回る100万個のニューロンと2億5600万個のシナプスで構成され、蜂の脳に匹敵するという。

「我々は無機半導体技術に制約がある中で、TrueNorthをなるべく人間の脳に近づけようと試みた」とIBMのチーフサイエンティストで、TrueNorthプロジェクトの責任者でもあるDharmendra Modhaは、昨年行われたインタビューで述べている。

しかし、一部の専門家は、IBMのアプローチに疑問を唱えている。IBMがTrueNorthを発表した2014年に、ディープラーニングのパイオニアで、フェイスブックのAI研究部門の責任者を務めるYann LeCunは、「TrueNorthでは、畳み込みニューラルネットワークを用いた画像認識を行うことが困難だろう」と指摘している。

Srinivasaは、インテルのチップも一部のディープラーニングモデルには適さないことを認めている。「従来のディープラーニングは長時間を要するが、我々のチップを使えば時間を有効活用することができる」とSrinivasaは話す。

インテルは2015年にFPGAチップメーカーのアルテラを167億ドル(約1.9兆円)で買収し、昨年はAIチップの開発を手掛けるNervanaを4億ドルで買収した。Srinivasaによると、Loihiが実用段階に入るまでに少なくとも3年から5年を要するという。

編集=上田裕資

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