テスラはトラック市場でも、自動運転技術や低水準の営業費といった自社の中核的な強みを生かすことができるだろう。だが、充電インフラの不備やバッテリー価格、輸送トン数や航続距離などについて考えれば、長距離運送トラックに電化の準備が整っているのかどうか、専門家の間でも意見が分かれるところだ。
テスラが市場にもたらすもの
テスラはその優れた電動ドライブトレインで知られており、新型トラックの性能の高さにも期待が持たれる。マスクCEOは、どのディーゼルトラックよりも優れたトルク特性を持つものになるとの見方を示している。
維持費も安く抑えることができるだろう。例えばモルガン・スタンレーのアナリストは、維持費は最大70%の削減が可能になると予想している。テスラのEVトラックは従来のトラックに比べ、燃料費、メンテナンス費用、保険料のいずれも安価に抑えられることができるためだ。
また、自動運転技術に関する膨大なデータベースを保有しているテスラは、同分野ではリーダー的存在と見られている。完全自動運転のトラックの誕生はまだ何年か先のことになるかもしれないが、テスラは人件費の管理などにもつながる自動化技術を他社に提供することもできるだろう。
さらに、中国や欧州各国、米カリフォルニア州などの規制当局が自動車のゼロエミッションを推進するなか、トラック市場においても排気ガスを出さないテスラのEVが有利な位置付けにあるということが証明されるだろう。
テスラには「問題」も
テスラがいかにEVトラックの価格と積載量、航続距離などのバランスを取っていくかについては、懐疑的な見方もある。米カーネギーメロン大学の研究によれば、航続距離が約965kmとなるEVトラックに必要となるバッテリーパックには、高ければ29万ドル(約3250万円)の費用がかかる。バッテリーだけでも、大型トラック(クラス8)の2倍以上の価格だ。
空荷時の重量も問題になる可能性がある。バッテリーパックがディーゼルエンジンのトラックに比べ、かなりの重量になるためだ。トラックの車両総重量は連邦規則で40トンまでと定められていることから、テスラは積載可能量を引き上げるため、航続距離を短縮させる可能性がある。
また、テスラはこれまでも生産能力に問題を抱えてきた。生産工場は現在も、カリフォルニア州フリーモントの一か所のみだ。マスクはトラックの生産について、1年半〜2年後までには生産規模を拡大することが可能だとしているが、実際にはこれ以上の期間がかかるだろう。セミトラックのように大型かつ複雑な構造にもなり得る自動車の生産開始は、テスラの現在の生産スケジュールとその効率性を大きく損なう可能性もある。