中国政府と国内の銀行は、仮想通貨を容認することができない。それは、自らの存在そのものを脅かすからだ。だが、それは長期的に見た場合、仮想通貨が日常の取引において、また金融資産として、人民元に代わり得る存在になった場合の話だ。
現在、そして近い将来の時点では、ビットコインの市場規模はあまりに小さく、中国政府とそれが所有・管理する銀行システムにとっての実質的な脅威とはならない。取引禁止が一時的なものと見る理由は、そこにある。
また、中国政府は国際的な格付け機関である米S&Pグローバル・レーティングなどに対し、自国の金融システムと信用状況が政府の管理下にあることを示したかったのかもしれない。ただ、それが取引禁止の本当の理由だったとすれば、中国の狙いは外れたことになる。S&Pグローバルは9月下旬、中国の国債格付けを1段階引き下げた。
一方、10月には第19回共産党大会が開催される予定だ。党指導部は中国経済に対する党の支配力を脅かす恐れがあるあらゆるイノベーションについて、厳しく追及されることになる。
中国政府は実際、過去に「一時的措置」を取ったことがある。2011年の第18回共産党大会が開幕する数か月前、政府は議論を呼んでいた変動持分事業体(VIE)という企業構造への追及を始めた。これは、「逆さ合併」によって中国企業に米市場での上場を可能にする仕組みだ。だが、上場した中国企業の不正会計が相次ぎ明らかになったことから、米規制当局に厳しく監視されるようになっていた。中国当局はこれらを対象とする新たな規則を導入。その後、同国のインターネット株は暴落した。
だが、テンセントやバイドゥ、アリババをはじめとする中国の主要なインターネット企業とその他の多くの小規模な同業各社の過去5年の株価の動向を見れば、大幅な下落も一時的なものだったことが分かる。新規則はさらにその後、撤廃されたか、適用されることがなくなっている。
仮想通貨についても、これと同じ状況が発生する可能性がある。党大会が終われば、禁止は段階的に解除されていくかもしれない。市場はそれを見込んでいるふしがある。ただ、最終的に市場がどの方向に進むのかは、時間がたってみなければ分からないことだ。