キャリア・教育

2017.09.28 08:30

AIが持ちえない「人間らしさ」とは|出井伸之


感情の畑を耕す方法
 
では実際、AIと共生していく時代に、人間が人間らしく生きるための、教育はどうするべきなのか。

私の過去を振り返ると、やはりソニーでの経験が大きい。事業部長から取締役そして社長にというポジションもだが、世界のあらゆる国と地域、ヨーロッパはスイスとフランス、アメリカはロサンゼルス、シリコンバレー、シアトル、ボストンなど、越境する度に私は勉強し異なる社会から学びヴィレッジつまりコミュニティが教えてくれた。こういったことが、何よりも私の人間性を育ててくれたのだと思う。
 
となれば、人間にとって必要なのは感情の畑を耕す環境だ。今までの日本は暗記など記憶力を高める教育が中心だった。しかし今や情報はインターネットで検索すればすぐに見つかる。それに選択制の中に正解があるというような教育ではなく、自ら仮説を立て新しいものを創りだしていく、知的生産のための教育へシフトを進めてほしいものだ。それに、文系・理系といった分類もナンセンスである。まあ、これは別の機会に深く話そうと思う。
 
私たちは、感情や感性の幅を広げるために、時に環境を変化させることも大切である。例えば、今まで自分が所属していない違うコミュニティに触れる。新しい環境の中で仮説を立ててチャレンジする。海外で異文化に接し自分の感情を育てる。このような行為はAIには難しいのではないだろうか。

世の中は、絶対的な正解のない問いが圧倒的に多い。つまり自ら創り出していくものが正解になりうる。今までの日本にはこういった学びが足りていなかったものかも知れない。しかし、情報産業の革命後の時代は、人間らしくあるために人間の本質を問われる。日本がいかにこの課題に取り組めるかにかかっていると思う。そのソリューションは日本の社会システムだけでなく世界の社会システムをも変えるだろう。人間らしい思考や感情が、より一層求められる時代に私たちは突入する。

次回、Fに続く(10月12日公開予定)。

インタビュー=谷本有香 構成=華井由利奈 写真=岩沢蘭 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力:Union Square Tokyo

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