ビジネス

2017.09.23

リクルートCEOに聞く「模倣不可能」な企業文化の秘密

峰岸真澄 リクルートホールディングス代表取締役社長兼CEO


創業以来培ってきたこの企業風土を、峰岸は「模倣困難性が高い、真似できない文化」と言う。この土壌の上で、経営陣の役割はただひとつ。常に「究極の競争力とは何か」と問い続けてビジネスモデルを生み出していくことだと言う。

「リクルートのビジネスモデルは、主に企業と個人のマッチングです。マッチングによる効率性と利便性をイノベーティブにつくり続けてきました。しかし、これをやったら儲かるのではないかという生半可なアイデアに対しては、こう問います。『それは究極のビジネスモデルなのか』と。誰にでもできるようなことであれば、すぐにレッドオーシャンになります。だから、究極の問いを常に投げかけるのです」

しかし、「言うは易しで、やるのは難しいんです」と峰岸は言う。究極を目指して投資をすると目先の数字は落ちる。それをどこがカバーするかを緻密に計算することが重要だという。

1990年代、インターネット時代の到来により、多くの紙媒体を持っていたリクルートは「IT化に出遅れた」と評された。「リクルートブック」は全ページが広告収入となるビジネスだったが、それを捨てて「リクナビ」に転換した。これも「究極のビジネスモデル」を問うた結果、ビジネスはさらに大きく成長した。

模倣不可能な企業風土で競争優位性の源泉をつくり、究極のビジネスモデルを探し続ける。それが法人顧客の「集客の手伝い」と言うビジネスからテクノロジーを駆使した「業務支援」に発展し、さらに企業のマッチングも創意工夫を繰り返す。

では、圧倒的当事者意識の集団で、峰岸はどうだったのかと問うと、こう答えた。「僕はゼクシィをはじめ何十という事業の責任者をしていましたが、事業に没頭する自分と、その自分を空から眺めている自分の両方がいました。主観と客観の両方を強くしていたのです」。

それを彼は「warm heart & cool head」と言う。これが彼の最大の武器なのかもしれない。

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リクルートホールディングス国内外に多くの子会社を持つ、人材業界のグローバルカンパニー。2012年「Indeed」の大型M&A、14年東証一部上場を皮切りに、世界ナンバーワンの人材系企業への道を突き進む。今後はHR領域への注力をさらに強化し、人材分野のグローバルプラットフォーム構想を掲げている。

峰岸真澄
◎リクルートホールディングス代表取締役社長兼CEO。1964年、千葉県出身。立教大学経済学部卒業後、87年にリクルート(現リクルートホールディングス)に入社。結婚情報誌「ゼクシィ」立ち上げなどに関わる。2003年、当時史上最年少の39歳で執行役員に就任。12年より現職。


文=児玉博、フォーブスジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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