フォーブス ジャパン11月で発表の「上場3年以内で最も時価総額を伸ばした社長」ランキングで1位に輝いた同社の峰岸真澄社長に話を聞いた。
「あッ」と力を込めると、峰岸真澄は続けて「とうてき」と言った。「圧倒的」と彼が強調するのは「当事者意識」。この圧倒的当事者意識が、上場3年以内での株価増加率1位と、どこでどうつながるのか。峰岸の話から見えてきたのは、リクルートが成長をし続ける仕組みである。
峰岸真澄は2012年に社長に就任し、リクルートホールディングスは14年に東証一部に上場。この間、時価総額の増加額は1兆円を超えた。峰岸が言う。
「短期業績が想定を上回る結果を出していることで、当社の長期的戦略ストーリーへの理解が深まったと思います。その長期戦略ストーリーと短期成果への期待がミックスし、将来のポテンシャルを示す時価総額という形で現れたと理解しています」
なぜ、想定以上の業績を上げているのか。峰岸は「海外展開の主戦略はM&Aですが、買収した企業の業績が当社独自のノウハウで上がりました」と言う。その「独自のノウハウ」に注目してみたい。
リクルートの柱は3つある。まず、12年に買収した米Indeedを主軸にしたHRテクノロジー。世界最大級の求人情報専門検索エンジンサイトで、売上げ1000億円以上の規模になり、前年比およそ60%の成長を遂げている。次に、リクナビ、SUUMO、じゃらん、ホットペッパーといった国内外の販促と国内のHR事業を中心にした「メディア&ソリューション」。これは古くからの事業をIT化させたものだ。そして3つ目に人材派遣がある。
成長を持続させる要因として、よくリクルートの企業文化が挙げられるが、峰岸はこう話す。
「企業理念のひとつに“個の尊重”というものがあります。個を挙げる企業は珍しいと思いますが、これは個人への期待であり、個人の志や欲望を潰さずに伸ばしたり広げたりした方が成長するからです。
例えば、当社の企業文化を表す風景として、新入社員が『先輩、これどうしたらいいでしょう』と尋ねると、『どうしたらいいと思う?』と聞き返される。全員がそうです。課長が部長に『どうしましょうか』と判断を仰いでも同じ。さらに、経営会議でも『どうしたらいいと思う?』と聞き返される(笑)。
まず、自分で考えざるをえないのです。新入社員の段階から何年も自分で考えて行動することが奨励される。そして、個人の周りにいる縦横斜めの全員が個人のメンターとして、個人の能力を最大限に引き出すことになり、この循環が圧倒的な当事者意識を生むのです」