原題は「イタリアン・ジョブ」だったが、それは当時のイタリア車では追跡しきれない、英国車MINIクーパーの性能と魅力を多いにアピールしていた。その名作は2003年、筋肉自慢の俳優マーク・ウォルバーグとシャーリーズ・セロンを起用してリメイクされた。
しかし、さらにもう一度リメイクされるとしたら、MINI ジョン・クーパー・ワークス(以下JCW)こそが、逃走車として主役を演じるに違いない。その性能、キビキビと軽快な走り、スタイル、そして楽しさ。愛すべき個性こそ、痛快な逃走劇にぴったりからだ。JCWは、MINIクーパー・ブランド史上、もっともパワフルなスペックを備えたモデルだ。
MINIブランドのフラグシップを意味するJCWは、F1レース界の歴史に名を刻む伝説的なエンジニア、ジョン・クーパーに由来する名前だ。彼は1950年代のF1のコンストラクターとして初めてミドシップマシンを開発し、レースの常識を変えてしまったことで有名だ。
標準のMINIの可能性を上げるため、クーパーは高度なチューニングを施し、完成したモデルを「MINIクーパー」と呼ぶことにした。中でも最高のポテンシャルを持つグレードが、JCWという仕様だ。
2Lの4気筒ターボエンジンを搭載するJCWは231psを発揮。トルクは320Nmで、静止状態から6秒わずかで時速60kmに達する。つまり、フォード・フィエスタST、ヴォクソール・コルサVXRに勝るとも劣らない。同じ前輪駆動車のジャンルでは、ホンダのシビック・タイプRの5秒には及ばないけどね。クーパーSのエンジンをベースにしたJCWは、いろいろ手が加えられたおかげで、クーパーSよりもトルクは23%、20馬力増しだ。
低回転域から力強いパワーが発揮され、ターボラグはほとんどない。でも、3500回転くらいで回していると、すぐさま231psが発生する。アクセルをめいっぱい踏み込んでギアをシフトアップしていくと、エキゾーストから気持ちのいいボォーっという大型犬の鳴き声みたいな音が聞こえてくる。こんな特徴は、スポーツ系のJCWに必要な味だ。
JCWには、6速マニュアルと、パドルシフト付きの6速オートマチックが用意されている。僕は短時間ながら、日本でオートマ車を試乗してみた。JCWは標準的なMINIと同じトランスミッションを採用しながらも、新しいソフトウェアを使っているおかげで、ギアチェンジがより速く、確実なものになっている。
サスペンションもクーパーSと同じセットアップだけど、スプリング系とダンパーはコーナリング性能を上げるためにチューニングを施し、アンチ・ロールバーを強化している。また標準で電動アジャスタブル・ダンパーが採用されている。