エヌビディアのデータセンター事業は、ゲーム事業に比べてまだ規模は小さいが、四半期ごとに前年対比で2~3倍の成長を遂げている。しかし、実際の売上高はもっと大きい可能性がある。アナリストによると、本来はデータセンター事業に計上されるべき大きな売上が、ゲーム事業に計上されているというのだ。
Susquehanna Financial Groupのアナリスト、Christopher Rollandが9月14日に発表したレポートによると、AIソフトウェアの開発者の多くがゲーム用GPUを使用しており、その金額はエヌビディアのゲーム事業の約10%を占めるという。ゲーム用GPUは、サーバ用GPUよりも安くて処理スピードも速い場合がある。
エヌビディアの直近の四半期決算によると、ゲーム事業の売上高は前年対比52%増の11億9000万ドル(約1340億円)、データセンター事業の売上高は前年対比175%の4億1600万ドルとなっている。Rollandの推測が正しければ、この四半期だけでデータセンター事業の売上高は1億ドル以上増えることになる。
この分析結果に基づき、Susquehannaはエヌビディアの目標株価を140ドルから155ドルに引き上げた。Susquehannaはレポートの中で、ゲーム向けGPUをAIソフトウェアの開発に使用している実例を2件紹介している。
一件目は、独立コンサルタントのAdam Geitgeyのケースだ。Geitgeyがゲーム向けGPUを好んで使用する理由は価格だ。彼によると、サーバ用GPU「Tesla」の価格は、ゲーム向けGPU「Titan」の4倍もするという。
新アーキテクチャ「Volta」にも期待
二つ目は、ニューヨークに本拠を置くスタートアップ、「Clarifai」のケースだ。同社は、ニュージャージー州にある自社のデータセンターにおいて、エヌビディアのゲーム用GPUを使用して画像認識モデルのトレーニングを行っている。その理由は、オーバークロックにより、実際よりも処理を高速化することができるからだという。Clarifaiの創業者兼CEOのマシュー・ズィーラー(Matt Zeiler)によると、エヌビディアは、オーバーヒートを避けるためにサーバ用GPUの高速処理は許可していないという。
ゲーム用GPUでAIソフトウェアを開発することにはデメリットもあるとRollandは指摘する。それは、ゲーム用GPUのメモリ容量に制限があるため、追加のソフトウェア開発が必要になることだ。
しかし、エヌビディアが革新的なGPUアーキテクチャ「Volta」を発表したことで、これまでの状況は一変するかもしれない。現在、Voltaはサーバ用GPUにのみ採用されている。Volta ベースの「Tesla V100」は640 個の Tensor コアを搭載し、ディープラーニング性能が飛躍的に向上している。このため、エヌビディアがゲーム用にもVolta ベースのGPUを提供するまでは、開発者たちはTesla V100を必要とすることになるだろう。
近年、エヌビディアのGPUは、AIの領域で爆発的に普及している。この結果、同社の株価はこの1年で170%近く上昇した。
「エヌビディアは、数年前まで単なるゲーム会社だったが、機械学習に完全に舵を切ったことで大成功した」とズィーラーは話した。