“ものづくりの民主化”をビジョンとし、3Dプリンターによるデジタル製造技術のものづくりを牽引するカブク社長の稲田雅彦は、そう話す。
象徴と言えるのが、2016年10月、国内最大級の家電見本市「CEATEC JAPAN」の会場で話題となった、1人乗り用の超小型電気自動車(EV)。同社は、ホンダとのオープンイノベーションにより、菓子メーカーの豊島屋向けのカスタマイズ車両を共同製作した。
「通常18〜24カ月かかる設計から製造までの工程を、デジタル化したことにより、わずか2カ月に短縮。我々は、世界30カ国以上、約400の産業用3Dプリンターをはじめとする工場のネットワークを持ち、デジタルものづくりのプラットフォームを提供する“オンデマンド製造サービス企業”です」
同社のマス・カスタマイゼーション・ソリューションは、自動車や家電など、従来カスタマイズできなかったモノを、一点からデジタル製造できる。迅速な3Dデザイン、そしてグローバルに広がる工場ネットワークの活用で、3Dデータがあればどこでも生産可能。金型なども不要で、時間もコストも大幅に削減した。カブクは現在、製造設備を持たず、企業や個人から注文が入ると、同社の持つアルゴリズムと製造アドバイザーにより、どこのパートナー工場で作ればいいかを即座にマッチングし、生産する。デジタル製造技術による、製造業版シェアリングエコノミーを実現している。
稲田がこれから見据えるのは、日本で約7兆円の市場規模がある特注品市場だ。プレイヤーの多い領域だが、稲田にはデジタルものづくりプラットフォームが大きく成長する領域になると見ている。
「カブクでは、設計データから製造、検品、納入する一連のプロセスにおける、熟練の技術工が積み上げてきた経験、勘、度胸のデータをシステムに蓄積し、学習させる。デジタル化で生産効率を上げ、人間は人間にしかできないことをやる。クラフトマンシップを持った人間が入るからこそ、より良いものを作ることができる。未来のソニー、ホンダが誕生するプラットフォームは、こうした融合から生まれると思います」