ウォルマートとアマゾンの価格競争はすでに始まっており、各ブランドには破壊的な影響がもたらされるかもしれない。消費者は、価格の安さだけを唯一の判断基準として物を買うようになり、ブランドとの感情的なつながりやロイヤルティー(忠実度)が損なわれる。ブランド側にとっては、利益が低下し、株主価値が破壊される。これはまさに「底辺への競争」だ。
価格競争により、コモディティ化した市場が生まれる。値引きなどの価格戦略が広告に取って代わり、企業はブランド差別化のための投資を縮小。世界最大の広告主であるP&Gは、今後5年間の間に20億ドル(約2200億円)の広告費削減を見込んでいる。
また、P&Gの競合企業で世界第2位の広告主であるユニリーバは、60億ユーロ(約8000億円)のコスト削減計画を発表した。こうした取り組みの痛手を受けるのは、クリエイティブ業界だ。ユニリーバは、クリエイティブ業務に活用する代理店の数を半分に減らすと発表している。
この影響は米広告業界に即座に広がっており、これまでブランドに仕えてきた広告代理店を弱体化させ、株式も急落している。広告業界はコスト削減や事業不振に見舞われ、新たな顧客の激しい奪い合いが始まり、多くの場合は価格競争につながる。また、アクセンチュアやデロイトなどのコンサルティング企業が参入して競争が激化するにつれ、広告代理店を取り巻く環境はますます厳しいものになるだろう。
食料品小売業界の価格競争が、ブランドにとって有利な環境を生むことはない。過去の経験を基に考えると、この嵐を乗り越えられるブランドは限られている。大半の企業は価格圧迫の犠牲となり、実店舗でもオンライン上でも淘汰(とうた)されてしまうだろう。