「InsTech」がもたらす保険業界の劇的な変革

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保険証券分析アプリも登場

また、2016年8月には、保険ショップ「保険クリニック」を運営するアイリックコーポレーションが、「生命保険証券自動分析アプリ」の開発に着手。このアプリは、同社が代理店向けに提供している保険証券分析機能と、グループ会社のインフォディオが開発した、画像認識技術で写真から文字を抽出しテキストに変換する人工知能OCRスキャナー「文字スキャン」を融合させたものだ。

スマートフォンなどで保険証券を撮影するだけで、その保険会社の証券の書式に合わせて自動で「生命保険証券分析シート」を作成し、保険の比較検討を容易にするという。これまで膨大な知識と経験が求められたコンサルタントの負担軽減と、保険証券の解析を担当する人材の能力の個人差をなくすなど、さまざまな活躍が期待されている。

こうした中、矢野経済研究所は2017年5月に「国内InsTech市場に関する調査結果(2016年)」を発表。その中で、2016年度の同市場の規模(参入事業者売上高ベース)は460億円になる見込みで、AIなどを活用した業務の効率化・高度化ソリューションが市場をけん引したと分析。これまで保険会社の業務プロセスのうち、引受査定や保険金・給付金の支払いなどにAIが導入されてきたが、2017年以降もその適用範囲はさらに広がっていくだろうと予測している。

そうした未来に向けて、前掲のレポートの中でアクセンチュアの金融サービス本部保険グループ統括マネジング・ディレクターの林岳郎氏は次のように分析している。

──AIやロボットは、従来はバックオフィスの業務支援や効率化、あるいはコスト削減を目的に活用されていましたが、最近では顧客対応の領域にまでその活用の幅を広げています。一方で日本においては労働時間の削減が即人件費の削減にはつながりにくいという雇用環境もあり、AI導入に期待する効果として『顧客エンゲージメントの向上』は58%に上り、グローバルの48%を大きく上回るものでした。そして、顧客とのコミュニケーションをデザインする上では、『AIが“ひと”の業務を代替する』のではなく、『顧客対応を最適化するためにAIと“ひと”がコラボレーションする』という発想が必要となってくるでしょう──

今後、InsTechによってビジネスの幅はどう広がっていくのか。保険業界におけるAI活用はまだまだ始まったばかりだ。

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文=千吉良美樹

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