ここまでの差が開いた要因にはスポティファイがこの市場の先行者だったことがあげられる。また、スポティファイがアップルミュージックよりも割安であることも大きい。スポティファイは先日、さらにその優位性を高める戦略を打ち出した。
9月7日、スポティファイと米動画配信サービス「Hulu」は新たなバンドルサービスの開始を発表した。これは両社が協力して行う学割サービスで、米国の大学生はHuluの広告付き動画配信「Limited Commercials」とスポティファイの広告なしプランが月額4.99ドルで利用可能になる。
これはスポティファイが押し出す低コスト戦略の一貫だ。同社は今後、最も音楽を消費する年齢層向けに低価格なストリーミングを提供し、ユーチューブその他の無料の音楽サービスに対抗していく。音楽業界関係者の間からも、音楽のサブスクリプションサービスにおいては月額4.99ドルが最も理想的な価格帯であるとの声があがっていた。
スポティファイはこの価格帯に沿う形でサービスを展開し、同時にHuluの視聴も可能にすることで学生らの支持を獲得する。ネットの利用者は一旦使い始めたサービスから、なかなか離れようとしない特性がある。
スポティファイは以前からオリジナル動画コンテンツの投入への意欲を見せていたが、動画コンテンツの創出には大金を要する。Huluとの提携は資金面から考えても理想的な取り組みと言える。Huluは2017年の1年間で20億ドルをオリジナルコンテンツに注ぐと報道されており、スポティファイの利用者にHuluへのアクセスを解放するメリットは非常に大きい。
一方でアップルミュージックもオリジナル動画コンテンツへの投資を行っており、スポティファイと同額の月額4.99ドルの学割プランを設けている。アップルが追い上げているという見方もあるが、実際にはスポティファイが市場をリードしている。
アップルにしてみればアップルミュージックは事業の要とは言い難く、豊富な資金の注入先の一つに過ぎないというのが筆者の見方だ。それに対し、スポティファイはストリーミング事業に全力を注ぎ、この市場でのリードを広げていく。ストリーミング分野におけるスポティファイの優位性は、当面の間揺らぎそうにはない。