そんな中、サンフランシスコ本拠の人工知能(AI)のスタートアップ「Skymind」は、ディープラーニングを直接ロボットに組み込もうとしている。Skymindは「SKIL Somatic」と呼ばれる新ツールを開発し、ロボットのディープラーニングの学習能力を向上させようとしている。ここで採用される仕組みは“畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural networks、以下CNN)”と呼ばれるものだ。
CNNではディープラーニングと強化学習を組み合わせ、AIが自ら試行錯誤を重ねることで特定領域のタスクをマスターする。Skymindのツールキットはクラウドとロボットの双方向けに設計されており、鍛え上げたアルゴリズムをロボットに組み込める。Skymindはオープンソースでソフトウェアを開発しており、開発者らは既にドローン等に向けたディープラーニングツールの開発を進めている。
Skymindはまた、日本のソフトバンクとも提携し、倉庫向けロボットやヒューマノイドロボットのペッパーに、人工知能を送り込もうとしている。倉庫向けのフェッチロボットに物体をつかむ操作を学習させる実験では、Skymindのツールを通じた学習により、認識精度を97%まで向上させることが出来たという。
SkymindのCEOのChris Nicholsonは「ソフトバンクは高齢者向けのロボット開発を進めている。ロボットが高齢者のために薬やコップの水を用意するような利用ケースを想定している」と述べた。
Skymind は2014年にコンピュータ科学者のAdam Gibsonと元ジャーナリストのChris Nicholsonらによって設立された。その後、同社は「Deeplearning4j」と呼ばれるオープンソース型のディープラーニング開発のフレームワークを作り、グーグルのTensorFlow等を競合に見据えてきた。現在のところ3600人以上のオープンソースのエンジニアがDeeplearning4jを利用中で、有料版を使用中の開発者もいるという。
Skymindはかつては、大量のデータ処理が可能なサーバでのディープラーニングに注力していたという。しかし、同社のロボット向けの新たなツールは、グラフィックプロセッサを組み込んだモバイルARMプロセッサ上でも作動するという。