いやが応でもEV時代!? 体験的「電気自動車論」

このたび発表され、10月2日に発売される新型リーフ。走行距離を飛躍的に伸ばして世界のEVをリードする存在になるだろう。315万円~399万円。日本では40万円の補助金が出る(Photo by 日産自動車ニュースルーム)


走行距離の短いEVには充電設備の充実が絶対条件だ。30分~40分で80%充電できる急速充電器の数はそれなりに増えていて、現在7136スポット(充電に長時間かかる緩速の100V、200Vは1万4669のスポット。家庭に引かれた普通充電器は別)。現在、ガソリンスタンドは減りに減って3万店程度というから、それに比べればまずまずと思える数だが、順調にEVが売れ始めたら、1時間以上の充電待ちも現実的になる。
 
私が以前乗っていたのは三菱のアイ・ミーブで、走行距離は160km(現在は180km)だった。カタログ燃費と実燃費がかけ離れていることは誰でも知っていることだが、ミーブは徹底的に気を使って走ってもせいぜい7割弱、冬は6割以下だ。その走りは静かで加速もすこぶる気持ち良し。走行安定性も抜群であったが、快適に走ればあっという間、そう50kmも走ればバッテリー残量が急激に減ってしまうから、ひたすら我慢して走った5年間だった。

つまり、EVにおいてのファン・トゥ・ドライブは快適な走りを味わうのではなく、いかに長く走れるかという楽しみだった。ハイブリッド車のオーナーも楽しいのはガソリンスタンドでの給油量(少ないほど、よく走ったという意味で)っていうから同じですね。初代リーフは200km、後に280kmの走行距離だったから、似たり寄ったりだったろう。

とはいえ、アイ・ミーブはセカンドカーとして近距離限定で使えばとても魅力的なクルマだった。3万5000km走ったとき、三菱自動車にいくら節約できたかを同型のターボ車と比較してもらったら、30万円という数字が出た。もっと大きなクルマと比べたらその金額差はさらに大きくなる。ちなみに1km走る費用はたった4円という計算になった。アイ・ターボは3倍の12円強だ。財布には決定的にやさしかった。

新しいリーフの走行距離は、なんと400kmと飛躍的に向上した。世界基準をはるかに超え、250kmは楽に走るだろう。やっと本格的に使えるEVが出てきたといえよう。気持ちいい走りと、エコな走りを皆さんにおすすめできる。もっとも、こう各社から次々とEVが出てくるとなると、どれを買っていいか、購入時期を含めて混乱するかもしれない。それに、100Vや200Vの緩速充電がマンション住まいでもできる態勢作りが絶対に必要だ。

現在EV界で最も注目される会社はアメリカのテスラだろう。今までの高級路線から価格を380万円に抑えたモデル3(走行距離350km)の生産を始め、年間50万台も売ろうとしている。電池は日本のパナソニックとの共同開発だ。


世界のEV界をリードするテスラの最新モデルは3万5000ドルで走行距離は350km。世界で年間50万代販売を目指す。日本での発売は少し遅れて2019年となる。再来年なので補助金額は不明。(Photo by Justin Sullivan / gettyimages)

そのパナソニック創業家の松下弘幸氏(ヒロ松下)は、私が編集長を努めていた『ベストカー』の連載を機に35年来の付き合いだ。インディ500のドライバーとして地上最速の戦いをした後、実業界に転身。テスラのイーロン・マスクとも付き合いがあるという。

「あの人はいま」と言うと、ヒロに叱られそうだが、氏のカリフォルニアの会社は「イノベーションカンパニー」をビジョンに掲げ陸・海・空への取り組みを目指す。次回ではそのヒロ松下が、最近もっとも力を入れている事業について語りたい。

元ベストカー編集長・勝股優の連載「だからクルマは面白い」
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文=勝股優

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