クリエイティビティは「心身の健康から」 坐禅歴10年の社長に聞く

佐藤英志 太陽ホールディングス代表取締役社長 (写真=yOU)

子どものときから独立心旺盛で大学時代に公認会計士の資格を取得した佐藤英志さん。現在の社長業に至るまでの変遷とクリエイティビティを養う原点について語っていただいた。


主にエレクトロニクス部品向けの化学品の製造・販売を行う太陽ホールディングス(HD)で取締役、副社長を経て、2011年より社長を務めています。
 
振り返れば子どものころから独立心が旺盛で、小さな商売をやりたいと思っていました。それともいうのも近所の工務店や会計事務所など小さな自営の家にはクラウンやベンツが必ずあって、「絶対にこっちの世界に行こう!」と思っていたのです。そこで大学3年生からダブルスクールで公認会計士の勉強をし、幸い1度目の受験に合格。4年生の秋より、監査法人トーマツに入所し、IPO専門部署で5年間働かせてもらいました。

1997年の退職後は、在職中に開設した会計事務所を引き続き経営。順調に進み、子どものころに思い描いていた生活には近づいたが、「豊かで楽しい人生を歩むには、社会に貢献をしなければ」と気づき、99年に「経営者の支援と輩出」を目的としたコンサルティング会社「エスネットワークス」を設立。3年後に、当時のクライアントだったUSENにCFOとして参画し、事業構造の変革や社員削減など、経営危機を乗り切る舵取りをしました。

しかし誰でも5年ほどである程度の仕事ができるようになると、以降の伸びの鈍化に悩むもの。それを機に次なるチャレンジに挑んできた私は、エスネットワークスの経営をパートナーに譲り、40代・50代はお声がけいただいた太陽HDの経営に集中すると決断しました。最初の3年は収益力を高めるために奔走。現在は社員の意識変革に取り組んでいます。

その先駆けが、14年8月に行った、太陽HDの研究拠点である嵐山(らんざん)事業所内の社員食堂のリニューアルです。

以前は事務的な机と椅子を並べた空間で、注文した仕出し弁当を提供しており、利用する社員の姿は単なる栄養補給状態。「味気ない食事をしている人からクリエイティブな発想は生まれない」と常々思っていた私は、くつろぎの空間と地元食材をふんだんに使ったおいしい食事を提供することに。社員の顔つきは劇的に変わりました。

15年12月には同事業所に「たいよう保育所」を開所。建材・家具は埼玉・西川杉を使用し、自己完結型電力システムを設置。社員の子ども以外に近隣の待機児童も受け入れています。16年5月には研究施設を全面リニューアルした嵐山ラボラトリーが完成。施設内には新しい機械設備を多く揃え、社員の意識変革だけでなく、研究開発職の採用にもインパクトを与えています。
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構成=堀 香織

この記事は 「Forbes JAPAN No.38 2017年9月号(2017/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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