私は先日、欧州を旅行中にiPhoneをなくした。携帯なしの生活を経験した人は誰もが、その喜ばしくも悲しい時間を冗談のネタにするものだ。私の結論は、iPhoneはないよりあったほうが良い、というものだった。残念なことに、それはアップルも知っている。
アップルには、iPhoneほど私たちの世界を劇変させる端末を発表する必要は、もはやないのかもしれない。同社が発表する製品群や、自動運転車技術などの他社追従的な事業から最近撤退したことを考慮すると、アップルの経営陣はスマートフォンを「iPhone 100」までバージョンアップし続ける方針で満足しているようだ。そうすれば経営陣と従業員を引退まで十分養えるだろう。
話は変わるが、アップルは新たに、販売とコミュニティーを強引に融合させた「タウンスクエア」形式の店舗構想も発表した。これは本当に、人間工学と操作性を重視していたあのアップルと同じ企業なのだろうか?
「タウンスクエア」の集まりを従業員が開くのは構わない。しかしアップルストアは、異なる視点を持つ多様なコミュニティーを一つにする場ではなく、アップルのブランドコミュニティーを融合させる場だ。「タウンスクエア」は民主主義実現のための新たなインターフェース(接点)ではなく、ただのずさんなマーケティングに過ぎない。
アップルの消費者である私たちは、過去数十年を通し、アップルにより多くのものを期待するようになった。
例えば、スティーブ・ジョブズがアップルに復帰したとき、会社は崩壊寸前だった。ジョブズは、最高6か月間会社を存続させられるだけの資金を持っていたため、その6か月間で「Think different(人と違う考え方をしよう)」というスローガンの下、新たなデスクトップ一体型パソコンのiMacを作り上げ、アップルを復興させた。
アップルは今後、私たちを再び熱狂させることができるのだろうか?