出資額は50億ドルから70億ドル、もしくはそれ以上になる可能性もある。関係筋によるとソフトバンクはウーバーの出資元らに対し、株式の買い取り提案を進めており、同時に直接投資の道も模索中という。
ソフトバンクとウーバー間の込み入った取引に関しては既にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報道した。交渉の進捗次第では金額が100億ドル(1.1兆円)を超える可能性もある。
ウーバーの企業価値は直近では690億ドルだったが、ソフトバンクは企業価値500億ドルの算定で、既存の出資元から株式の買い取りを目指している。株主らは大幅なディスカウント価格で株を手放すことになるが、複数の出資元が売却に応じる可能性があるという。
一方でウーバーの初期からの出資元のベンチマークは先日、今後2年でウーバーの企業価値が1000億ドル(約11兆円)に達するとの見込みを示していた。ベンチマークは現在、ウーバーの共同創業者で元CEOのトラビス・カラニックと会社の支配権をめぐり、法廷闘争の最中にある。
関係筋によると、ソフトバンクはウーバーの株式の17%から22%の取得を目指しており、同時に2名を役員会に送り込みたい考えだという。ただし、ウーバー側はソフトバンクが直近の企業価値690億ドルをベースとし、10億ドル(約1100億円)以上の直接投資を行うことを条件としているとの説もある。ウーバーはこの件に関しコメントを避けた。
出資を検討中の企業としてはドラゴニア・インベストメント・グループやゼネラル・アトランティックの名もあがっている。ソフトバンクも含め各社らのコメントは得られていない。
グーグル陣営はリフトに追加出資か
ソフトバンクはウーバーの競合企業らにも出資を行っているが、ウーバーの取締役の多くは今回の出資を歓迎しているという。競合に対して資金が注入されるよりは、自社に資金を呼び込みたいという考えだという。ウーバー側には米国での市場シェアが今後、低下するのではないかという危機感もある。
9月14日、ブルームバーグはアルファベットがリフトに対し10億ドルの出資交渉に入ったと伝えた。この出資が実現すれば既にこじれた状況にあるウーバーとグーグルとの関係が、さらに込み入ったものになる。
グーグル傘下のグーグルベンチャーズは、2013年にウーバーに2億5000万ドルを出資した。しかし、その後、グーグルからスピンアウトした自動運転部門のWaymoがウーバーを知的財産権の窃盗の疑いで提訴するとグーグルとウーバーの関係は冷え込んだ。さらに、今年5月にWaymoはリフトと自動運転車開発で提携を行っている。
今回のアルファベットのリフトへの出資の噂は、ウーバーの経営陣にソフトバンクの出資を受け入れさせるための圧力とも見られている。また、仮にソフトバンクがリフトに資金を注入したら何が起こるかという恐怖に、ウーバーの経営陣を直面させる効果もある。
WSJは関係筋の話として、ソフトバンクがリフトと非公式に接触したと伝えている。しかし、今のところ進展は見られていないという。