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2017.09.27

家族で「財団」を持つ、アメリカ流セカンドライフが日本にも

ニューヨークのマンションの自宅が財団事務所でもあるクンスタダー氏


財団の場合、一個人として寄付する場合と比べ、NPOの支援先から、対等な課題解決のパートナーとして認識される。財団創設者からは「財団を作らなければ一生知らないままでいたかもしれない、地域の様々な問題に気付けた」という声が多い。そして、自分の財団が果たせる自分たちらしい役割が見つかることで、やりがいのある充実したセカンドライフにつながるというのだ。

同時に「ファミリー財団をつくると、家族や子どもたち、あるいは友人などとも一緒にどういう事業を応援するのかを考えることができることも楽しい。子どもたちにとっても社会の学びの経験になっている」という声もよく聞く。「子どもに残す最高の遺産はファミリー財団だ」という人もいる。家族にとっての、違った形でのレガシー(遺産)の残し方として捉えられている。

300万円で財団がつくれる時代

では、日本におけるファミリー財団の実状はどうか。「日本は制度が整っていないから、日本ではできないだろう」「一握りの超お金持ち以外関係ないだろう」といったイメージを抱く人は多い。もちろん、欧米と完全に同じ環境ではないが、実は日本でも状況が変わりつつある。 

最も大きな変化は、設立に必要な資産額。かつては、3億円の基本財産を用意した上で、それ相応の組織体制を構築することが求められていた。しかし、2008年から、財団法人が300万円でつくれるようになったのだ。

今では、最低限の運営コストと手続きで運営することができる。さらに、財団を運営するに伴って発生する経理事務や行政への手続きなどを、一括して請け負って手伝ってくれる税理士などの専門家によるNPOも誕生。税制上の優遇措置という観点では、寄付控除の税制の適用が受けられる「公益」財団法人も、一定条件を満たせば、設立後数ケ月で認定される可能性もある。

実際に今、日本でも徐々にではあるが、自分たちで財団をつくろうとしている人たちが出てきている。私も、いくつかのこうした財団の設立をお手伝いしてきた。そこに見えるのは、「楽しく社会貢献する」財団経営者たちの姿である。

企業経営者やリタイアした人たちが、自ら財団をつくる。親の遺産を受け継いだ人たちが、その資産で財団をつくる。運営の手間は最小化して、無理なく社会貢献をすることを考えている。こうした「子どもの学芸会を見に行くように、助成先のNPOのイベントに参加する」感覚で社会貢献を楽しむというスタイルが、今後日本でも広がってくる可能性があると、私は考えている。


鵜尾雅隆◎日本ファンドレイジング協会代表理事。GSG 社会インパクト投資タスクフォース日本諮問委員会副委員長、社会的投資促進フォーラムメンバー、日本ボランティアコーディネーター協会副代表理事、(株)ファンドレックス代表取締役なども務める。JICA、外務省、米国NPOなどを経て2008年NPO向け戦略コンサルティング企業(株)ファンドレックス創業、2009年、寄付10兆円時代の実現をめざし、日本ファンドレイジング協会を創設し、2012年から現職。著書に「ファンドレイジングが社会を変える」「NPO実践マネジメント入門(共著)」など。

文=鵜尾雅隆

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