ライフスタイル

2017.09.17 12:00

たった3語で地球上どこでもピンポイント、メルセデスが採用する最新ナビ

新ナビシステム「What3Words」

いまや、クルマに地図を乗せている人は少なくなっただろう。日本で開発されたカーナビと呼ぶGPSナビが普及してきたからね。

でも現実には、カーナビにイライラすることも少なくない。使いにくいシステムもあるし、特に輸入車のカーナビは残念ながら情報が古いこともある。また、目的地に近づくと勝手に案内が終了になったり、完全に1ブロックずれていることも。

そんな不便さを解決する革命的なシステムが、What3Words(以下W3W)だ。使い方はとても簡単だが、確実に目的地の住所を見つけ、案内してくれる。

ロンドンに生まれたスタートアップであるW3Wは、全地球を3m×3mの方眼57兆で区切り、それぞれに3つの単語をつけたのだ。このわずか3つの言葉で、誰でも正確に目的の地点を見つけ、それを他の人と共有することができる。しかも、曖昧さはなく、非常に精確に。

9月12日に開幕したドイツ、フランクフルト・モーターショーでは、メルセデス・ベンツがこの画期的な住所システムを同社の2018年型モデルから採用すると発表した。W3Wは、これまでに国連と赤十字社が紛争地域で活用している。

「メルセデス・ベンツは、住所システムが確立した先進諸国であっても問題は生じることを認識して、私たちのシステムの採用を決定した」と、W3Wのマーケティング担当、ジャイルズ・リース・ジョーンズは話す。「もちろん、メルセデス・ベンツ社のカーナビは、従来の方法も使えます。それに加えてW3Wが実現した3m×3mグリッドでの検索もできるようになります」

この新しい地点認識システムは、文字と音声いずれでも使うことができる。目的地に割り振られた3つの言葉を、1つずつ読み上げるとシステムがそれを理解して、間の「.」をはさんで表記してくれる。



試しに、ニューヨーク市のメトロポリタン美術館を探してみよう。ここの3単語は「cage.rocks.gladiators」だ。もし、一文字違ったり多かったときも、心配ない。例えば、sがついている「cages.rocks.gradiators」と名付けられた地点は4000キロ以上離れたカリフォルニアに配置されているからだ。

また、音声入力した際、あなたがきちんと発音していても、初めの2つめの単語からsが抜けて、システムが「cage.rock.gladiators」と認識してしまうこともある。でも、それはイギリスのある地点になっているので、あなたが行きたい場所でないことは一目瞭然。一瞬で、自分の目的地を選択できるわけだ。

「似た言葉の組み合わせは、できるだけ距離を隔ててあるので、戸惑うことはありません」と、クレア・ジョーンズCCO。エラーを見つけ、正しい言葉や組み合わせを照会する機能も用意されている。また、サンプル数も多く、ひとつの単語がさまざまなアクセントで発音されることを、システムが学ぶようにしたという。

「このW3Wがいかに役に立つかを社会が認知し始めたので、これからいよいよ成長します。モンゴルとナイジェリアでは、W3Wが郵便制度として採用されました。ナイジェリアのすべてのバス停には、3語の組み合わせがつけられています。また、英・グラストンベリー・フェスティバルでは救急支援のためにW3Wが利用されました。会場が大きく観衆が多くても、これならピンポイントで救援が必要な人を見つけられますからね」とジョーンズ。

「また、国際配達サービスのアラメックスも、住所制度や居住者表示が徹底していないアフリカと中東で使い始めました」とリース・ジョーンズも自信を見せる。こういう成功例を見ると、メルセデスが業界で真っ先にW3Wを採用した理由も納得できるだろう。
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文=ピーター・ライオン

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