イケアの家具アプリで見えた「アップル製AR」の巨大な可能性

イケア店内の様子(Photo by Stephen Chernin/Getty Images)

アップルが6月に開催した開発者向けカンファレンス「WWDC」で最も大きな注目を集めたツールの一つが、iOS11向けのARアプリ開発プラットフォーム「ARKit」だった。

アップルは9月12日、iPhone XやiPhone 8、8 Plusを発表した。これによりARKitと合わせてARアプリに最適なハードウェアも出そろったことになる。既に多くの開発者がARKitを用いてアプリ開発を行っている。

イケアでは、70人の社員が9.5週間にわたり昼夜を問わず開発に取り組み、「イケア・プレイス(Ikea Place)」というアプリを開発した。ユーザーは、このアプリでイケアのデジタル家具を自宅に配置し、購入する前にフィット感を確かめることができる。

イケアのデジタル担当のMichael Valdsgaardによると、同社のARへの取り組みは2013年に始動した。しかし、当時のARには専用のヘッドセットが必要で性能も今ひとつだった。ARKitでは部屋のサイズを測定してバーチャルな物体を正確に配置することが可能だという。

また、イケア・プレイス以上にARKitの可能性の高さを示したのが、ゲーム会社「Developer Directive Games」が開発したARゲーム、「The Machines」だ。このゲームは、現実世界にバーチャルな戦場を重ね合わせ、プレーヤーはiPhoneを動かして戦闘を行う。

ARKitはiPhone 6s以上の端末に対応しているが、9月12日に発表された新端末で最大の性能を発揮すると見られる。iPhone 8と8 Plusに搭載された最新チップ「A11 Bionic」は2コアの高性能コアと4コアの高効率コアの全6コアで、独自開発したGPUと画像処理プロセッサを内蔵している。

また、最上位モデルのiPhone XのA11チップには、ニューラルエンジンが搭載されており、周囲をより正確にトラッキングすることができる。これにより、さらに優れたAR体験が楽しめるという。

グーグルはAR分野で出遅れ

「アップルがARプラットフォームに重点を置き、最高のAR体験を提供するスマートフォンを開発したことは明らかだ」とエンタープライズ向けAR開発企業「Scope AR」の共同創業者兼CEOであるScott Montgomerieは話す。

アップル以外にも、グーグルとマイクロソフトがARプラットフォームを提供している。しかし、グーグルは空間マッピング技術「Project Tango」をスマホメーカー向けに強く推奨したが、これまでTangoを採用したのはAsusとレノボの2社にとどまり、リリースされた端末も精彩を欠く。

グーグルは先日、Android向けARプラットフォーム「ARCore」を新たに発表した。しかし、Androidにおいてグーグルが端末メーカーを完全にコントロールすることは難しく、現段階ではグーグルのPixelとサムスンのGalaxy S8でしか使うことができない。

Valdsgaard は、グーグルがTangoを乗り越えて新たなAR開発支援に乗り出したことを歓迎するが、現在はARKitのみに対応しているという。

「これまでアップルのプラットフォームだけに集中してアプリ開発を進めてきた。イケアは多くの顧客を抱えており、なるべく多くの顧客にリーチするためには世界最大のARプラットフォームを利用することがベストだと考えたからだ」と彼は話した。

編集=上田裕資

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