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2017.09.15

自動運転の未来を担う「ベロダイン」 テスラ社員らを引き抜き

Ed Aldridge / shutterstock.com

自動運転車向けセンサー「LiDAR」のトップメーカーであるベロダインは、2018年から年間100万台のLiDARを生産する予定だ。大量生産に対応する「メガファクトリー」の稼働に備え、同社は業界のベテラン2名を採用した。

一人は、元ヒュンダイモーターアメリカのMircea Graduで、品質管理担当のシニア・バイスプレジデントに就任する。もう一人は、テスラとソーラーシティで生産自動化に携わったPablo Gonzalezで、ロボティクスと自動化工学を担当する。

「高度なスキルを持つベテラン人材を積極的に採用し、経営体制の強化を図っている」とベロダインの創業者兼CEOのDavid Hallは声明で述べた。

Hallは1983年にベロダインを設立し、最初はオーディオ部品の製造を手掛けた。その後、LiDARの開発に着手し、今から10年以上前に回転型LiDARに関する特許を取得している。Hallは昨年、フォードとバイドゥに自身の保有するベロダインの株式を総額1億5000万ドル(約166億円)で売却したが、外部の投資家から出資を受け入れたのはこれが初めてだ。

新幹部の2人は、サンノゼの新工場でLiDARの完全自動生産に向けての動きに着手する。ベロダインは2005年以来、カリフォルニア州モーガンヒルでLiDARの生産を行ってきたが、需要の急増を見込みサンノゼに大規模な新工場を設立した。

「新工場が稼働すれば、数年後にはLiDARの価格を大幅に下げることができるだろう」とHallはフォーブスとのインタビューで述べている。

競合のInnovizとLeddarTechらも先日、それぞれ6500万ドルと1億100万ドルを調達し、LiDARセンサーの生産を近く開始する。ベロダイン製LiDARの価格は数千ドルするが、両社はこれを大きく下回る価格で提供することを目指している。

自動運転車にはAIと高度な演算能力に加え、人間と同じような「目」が必要だ。LiDARは天候や照度に関わらず、ロングレンジで全方位の3Dイメージを提供してくれるため、自動運転車に欠かせないツールとなっている。

テスラでの経験を工場運営に活かす

この分野にはシリコンバレー本拠のQuanergyとLuminar、イスラエルのスタートアップであるOryx Vision、ドイツのIbeoなども参入している。これまで、ベロダインの最大の顧客だったグーグルでも、自動運転企業として独立したウェイモがLiDARの独自開発に着手している。

ライバル企業は生産能力がまだ乏しいのに対し、ベロダインは長年の経験で培った生産と販売のノウハウが大きな武器となっている。

「他社はローエンドな製品からスタートしているが、我々はハイエンドな製品を提供している。彼らが性能の向上を図るよりも、我々がコストやデザインを彼らに合わせる方が簡単だ」と元ヒュンダイのGraduは述べている。Graduは、ヒュンダイの前には、ダイムラーベンツやかつてのクライスラーグループで勤務した経歴を持つ。

一方、Gonzalezはテスラ傘下のソーラーシティの工場で、太陽電池モジュールの自動生産システム設計に携わった。

「我々は世界を驚かせてみせる。この工場では、大量のLiDARを生産できるだろう」とGonzalezは自信をのぞかせる。彼は年間100万台の生産目標は達成できると確信している。

「100万台は2018年までの目標に過ぎない。我々は、この工場の生産能力をさらに高めることが可能だ」とGonzalezは話した。

編集=上田裕資

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