私たちは食べたものでできているだけでなく、食事の取り方に応じて働き方が変わる。食生活は私たちが自覚する以上に、仕事の成果や生産性に直接的な影響を与えているのだ。
消化器官が消化のためにエネルギーを消費することは周知の事実だ。体が使えるエネルギーは限られており、心身を通して最高のパフォーマンスを達成するため、食事に細心の注意を払うべきなのも当然のことだ。
平日に食べ過ぎたり、不適切な食品を摂取したりすれば、生産性が大きく低下するかもしれない。しかし、食生活と生産性の間には、実はさらに深い関係がある。
炭水化物は生産性の大敵
炭水化物は、過去10年間ですっかり悪者扱いされるようになったが、それには一理ある。健康的な食生活に炭水化物が必要なのは確かだが、米マサチューセッツ工科大学脳科学・認知科学科の研究者らが行った調査では、炭水化物を取り過ぎると生産性が大きく損なわれる可能性があると指摘されている。
炭水化物は体内のインスリン値に直接影響を与えるため、日々の活力の度合いを大きく左右し得る。炭水化物を豊富に含む食品を摂取すると、体内では大量のインスリンが放出され、それにより脳内に睡眠ホルモンがあふれるのだ。
血糖値が低いと自己管理が困難に
自己管理と生産性の間に非常に強い関連性があることに、私たちの多くは気付いていない。また近年行われた複数の研究では、甘い誘惑に打ち勝ち、楽しいことではなく正しいことをする能力と体内のグルコース値の間に、以前考えられていたより密接な関係があることが示されている。
「グルコース値」は基本的には「血糖値」と同じだ。空腹で低血糖になったときの感覚が自分の気分や行動にどのような影響を与えるかについては、誰もが知っているだろう。
社会心理学誌『Personality and Social Psychology Review』に近年掲載された論文は、こうも述べている。「グルコースは脳のほぼ全ての活動のエネルギー源となる。自己管理は複雑な脳活動で、特に大量のエネルギーを必要とするため、グルコースへの依存度が特段に高いと言えるだろう」
つまり、血糖値が低いと自制心が低下し、仕事を完了させる能力も最終的には低下してしまうのだ。