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AI情報プラットフォーム「AI Open Innovation Lab」

Photo by iStock

日本社会が抱える社会的課題のひとつに「インフラの老朽化」がある。

野村総合研究所によると、高度経済成長期に整備されてきた道路、湾港、公共賃貸住宅など約786兆円もの「インフラストック」の多くがここ数年を境に更新の必要に迫られており、さらにむこう十数年間で事態が深刻化していくと言われている。

インフラの更新および維持管理費は、年々、増加傾向にある。内閣府が発行している資料「生産性の高い社会資本整備実現に向けて」には、その“負担額”の明示があった。曰く、今年2017年の段階では、「現存インフラを同規模で維持するには年間9.17兆円」かかる。なお2007年には約4兆円だったので、すでに2倍以上も資金的負担が増えた計算になる。

とはいえ、インフラの老朽化は資金や財源があればさっぱり解決するというものでもない。NTT DATAが過去に発行した資料「インフラ危機を乗り越えろ、社会インフラ再生へICTを生かす」には、次のような問題が指摘されていた。

──損傷や劣化などにより、地方自治体が通行車の重量制限などを行っている橋の数が年々増加傾向にある。予算不足に加えて、維持管理の技術・人材の不足を理由として、定期点検を実施していないことが背景にある──

上記のような状況は、おそらく橋梁など一部のインフラに限らないだろう。詳細に調査を行えば、財源的な負担とともに、ヒト=リソースとテクノロジーが不足しているために老朽化が避けられていないインフラの規模は、相当多いと予想できる。

今年7月上旬に九州地方を豪雨が襲い、住民の生活に大きな打撃を与えた。メディアでは、自然災害が起こるたびにインフラの強化が必要と叫ばれもするが、実際には具体的な解決策はあまり見いだせていないというのが現状ではないだろうか。なお、前述のNTT DATAの資料には、次のような続きがあった。

──損傷の早期発見・早期改修という先進的な予防保全の取り組みを行うことで、従前の維持管理の方法に比べてインフラ更新時期の延長が可能であるとの試算がある──

現在、人工知能(以下、AI)には、インフラ保全のための活用が期待されており、実用化への動きも活発化しはじめている。

例えば2017年7月に入り、パナソニックとパナソニックシステムソリューションズジャパンは、インフラ点検サービス「Smart Image Sensing」事業を開始すると発表。AIやロボティクスを駆使して、道路や橋、ダムなど老朽化が進む各種インフラの整備をサポートするという。

ここでAIは主に、ウェアラブルカメラやドローンなどにより撮影された画像を解析・判定するのに使用される。つまり、インフラのひび割れやさびなど異常を検知した際に、関連データを自動的にユーザーに提供するというものだ。

AIを利用した画像解析でインフラの異常を検知しようという動きは他にもある。護岸コンクリート(河岸や海岸にあたる水の流れなどの勢いを弱めるコンクリート)の維持管理のための調査業務を行う八千代エンジニヤリングは、データ活用企業・ブレインパッドのディープラーニングサービスを導入している。

従来だと、広範囲に渡る護岸コンクリートの点検には人間の目が必須だった。しかしそれには、膨大な手間やコストがかかる上に、現場の担当者レベルで劣化判断基準が揺れるという問題が生じることになる。そのため、劣化の判断をAIで自動化しようというのが同社の狙いだ。

「劣化判断」から「劣化予測」へ

八千代エンジニヤリングが導入したシステムは、今年6月の段階で“人目”による検査と同じような精度で劣化を検知できているそうだ。同社は今後さらに判定プロセスの自動化を進め、他のインフラ分野の維持管理作業にも展開していく方針だという。

なお、ゼネコン企業・日本国土開発とIT企業・開学情報システムズは、インフラの材料となるコンクリートの「表層品質評価」をAIで代替しようという試みも始めている。こちらもAIの用途としては、画像解析により劣化判断という範疇になりそうだ。

「インフラの老朽化を防ぐAI」という括りでみたときに、画像解析による劣化判断以外の使い方もあるかもしれない。まだ実用化された例は見当たらないが、「劣化予測」などがそれにあたるだろう。すでに製造業の現場では、製品の故障予測にマシンラーニングなどAI技術が使われているという実例があるが、インフラにセンサー類などを上手く組み込みデータを収集・管理できれば、劣化前にインフラ保全を行うことも決して不可能ではないはずだ。

日本が抱える社会的課題を解決しつつ、大きなビジネスインパクトを与えるであろう画期的な「インフラ保全AI」の登場が待たれている。

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文=出水鴻正

 

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