サッカーでは、2014年のブラジルW杯で、映像技術を用いて審判のゴール判定を補助する「ゴールライン・テクノロジー(Goal-line technology)」が導入された。最近では欧州サッカー連盟(UEFA)も導入している。
「誤審」問題の解決へ
ゴールライン・テクノロジーのひとつである「ホークアイ(Hawk-Eye)」システムは現在、サッカーやテニスをはじめ、クリケット、ラグビー、バレーボール、野球、アイスホッケーなどなど、数多くの競技で実用されているという。サッカーのゴールライン判定において、その誤差は平均で1.77mm(2015年当時)というのだから、驚きの精度だ。
米バンク・オブ・アメリカと英オックスフォード大学の研究チームは、今後10年以内にロボットが代替する職業を分析した報告書を発表しており、そこでは「スポーツの審判がロボットに置き換えられる確率は90~100%」とされた。
審判が人からロボットに変われば、誤審は減るだろう。それが常識となれば、試合に負けた選手や監督が誤審を言い訳にすることはできなくなるかもしれない。
AI×スポーツのビジョンと現実
テクノロジーの導入が著しいスポーツ界では、人工知能(AI)の有効な活用にも注目が集まっている。
米半導体大手・エヌビディアのブログ記事「AIがプロ・フットボール・コーチのアシスタントへ」(2016年9月12日付)は新たな試みを伝えている。オレゴン州立大学のコンピューター・サイエンスの教授であるアラン・ファーン氏は、試合のビデオとAIを利用してコンピューターにフットボールを理解させ、指導できるよう学習させているという。
現実には「ビデオだけに基づいてフィールド上の22人の選手をすべて追跡する作業にも苦戦」していたそうだが、ファーン氏は同記事で次のように述べている。
── エヌビディアのTesla K80 GPUアクセラレータとCUDAプログラミング・モデルを採用しました。これにより、NFLの『22人全員』の選手をビデオ内で追跡して、試合を理解するためのディープラーニング・アルゴリズムの開発を進めています(同記事より引用)──
スポーツにおけるAI活用のステップは、1. データ収集、2. パターン分析、3. シミュレーションと考えられている。前出のファーン氏の例を見ればわかる通り、現状はデータ収集の段階なのだろう。
それでも、具体的な提案やアドバイスをするAIも少しずつ登場している。
PGAツアー日本公式サイトによると、アーコス・ゴルフ社はAIを採用した「アーコス・キャディ」を発表。マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」と機械学習機能を利用して、コースに適したゲーム戦略を提案してくれるという。アーコスのシステムを利用したゴルファーは平均で2.77ストローク、ハンディキャップを向上させることができたというだけに、今後の展開が期待されている。
AIの提案する判断や理論がどれだけ優れたものであったとしても、選手や監督がそれに本気で取り込むかどうかは別の話だろう。審判のロボット化においても、拒否反応を起こす頑固なファンがいるのが現状だからだ。
人間が主役であるスポーツにおいて、AIがどこまで踏み込んでもいいのか。そんなことを真剣に議論するような未来が迫っている。
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