こう語るのは、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を運営する、サイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎だ。2013年のサービス開始から4年が経ち、月間の累計調達金額が国内最大となるなど、Makuakeは日本を代表するクラウドファンディングサービスとなった。
同サービスは、直近国内記録である1億2000万円以上を集めた和歌山のスタートアップ企業によるハイブリッドバイクのプロジェクトや、シャープとコラボレーションした日本酒のプロジェクトなど、新製品の開発を目的に使われることが多いのが、特徴だ。また、2017年8月にプロサッカー選手の本田圭佑が投資をしたことでも話題となった。
これまで同サービスを通じて、数多くの作り手と買い手を繋いできた中山が、「新しい投資」という観点からクラウドファンディングの可能性について語ってくれた。
いま、顧客が求めているものは何か。顧客のニーズを把握した状態で、新たな製品づくりに取り組めることが、クラウドファンディングの持つ“新しさ”だと考えています。
今までは、その製品が市場から必要とされているのかどうかは分からなかったのですが、クラウドファンディングで開発資金を募ることで、開発のニーズを定量化できるようになったんです。
これより、すごく離れた関係だった「作り手」と「買い手」が「支援する側」と「支援される側」という形に変化し、顧客ニーズをより満たす商品が多く開発され、消費される世界が構築されていっていると思います。
「日本アカデミー賞」作品を生んだ
例えば、一昨年Makuakeで3900万円の資金を集めた映画『この世界の片隅に』のプロジェクトは印象的でしたね。映画領域のクラウドファンディングで資金調達を行い事業的に成功したのは、この映画が初めてです。
当時、クラウドファンディング先進国である米国など海外の事例を鑑みても、この映画のように初期にクラウドファンディングで資金を集め、最終的に商業映画として成功を収めた事例は今まで見たことがありませんでした。興行収入も最終的には25億円を突破し、日本アカデミー賞アニメ部門の最優秀作品賞を取得るという大金星をあげました。
また、このプロジェクトは目標金額である2000万円(2015年当時、税抜き価格)という資金を8日間という短期間で集めたのも印象的でした。まさに、Makuakeというプラットフォームを通して「この商品が欲しい」という市場ニーズが顕在化したといっても過言ではないほど、印象的な出来事だったと思います。
クラウドファンディングは、馴染みのない人からすると小難しいものだと思われがちですが、本質的にはフリマアプリ「メルカリ」のようなもの。「欲しい人と価値を提供したい人を繋ぐプラットフォーム」なんですよね。それを身をもって体感したのが、この映画のプロジェクトの成功でした。
源流は、ベトナムでの経験
私がMakuakeを立ち上げようと思った源流は、過去の経歴にあります。サイバーエージェント・ベンチャーズというベトナムのVC(ベンチャーキャピタル)に所属し、ベトナムに住んでいたことがあるのですが、当時、ベトナムで日本製の製品がまったく使われていなかったことに衝撃を受けたんです。
日本では「日本製のものは品質が高いので海外で高く評価されている」とよく言われていますが、現実は逆でした。日本には高品質の製品をつくれるポテンシャルがあるのに、それが海外では全然理解されていない。
ものづくりの才能に恵まれている国であるにもかかわらず、なぜポテンシャルが発揮されていないのか。その要因は、商品を開発する側の論理ばかりが重視され、一番大切な商品を利用する側の論理が無視されたことの結果なんだな、と思ったんです。
だからこそ、Makuakeというサービスを通じて、日本のものづくりを取り巻く環境を変えていこうと考えたのです。今後、このサービスを用いて世の中のまだない商品ニーズを掘り起こしていけたらと考えています。