大阪工業大学の佐野睦夫教授の研究室では、AI技術を搭載し、認知症患者が安全に料理をすることができるシステムを開発している。小さなモニターとカメラの付いた「スマートグラス」をつけて包丁を使うと、包丁から数秒間目がそれると、モニター上に警告が表示されるというものだ。
さらに、製薬会社のエーザイは慶応義塾大学と共同で認知症の薬を開発する研究を発表。ラボを設置し、認知症の原因や遺伝・環境と病との関係、体内に発症を防ぐ仕組みがあるかを調査していく際に、大量の分子データの解析にAIを用い、開発のスピードアップをはかるという。
マサチューセッツ工科大学では、認知症の診断がよりスピーディーに行えるソフトウェアを開発している。1秒間に80回記録されるデジタルペンを使い、患者が指示された絵を描いている時のペンの動きや、ためらった時の精密な情報をデジタル化し、AIで診断をするというものだ。
人の代わりに見守り、ボケや認知症を防ぐ技術が続々と開発されるなど、超高齢化社会に向けての不安がうかがえる一方で、ヘルスケアアプリをはじめ、健康維持のための技術開発も進んでいる。「2015年末あたりからは、サービスの分野から技術的なブレイクスルーを必要とする分野へと流れが変化しており、中でもヘルスケア×AIの領域が急速に伸びている」(500 Startups Japanの澤山陽平氏の発言/「日経デジタルヘルス」2016年10月25付)との声もある通り、今後まだまだ同分野の快進撃は続くことは間違いない。
実際、米国ではすでにAIによる遺伝子解析の需要が拡大していたり、スタンフォード大学の研究グループが皮膚がんの診断にAIを活用したりと、その先へと歩みを進めている。来る超高齢化社会を前に、日本のAI活用はどこまで歩を進めることができるだろうか──。
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